09


体育祭も終われば、中間テストが始まる。そのため教室の中も暗い空気が漂ってくる。
ちなみに私の一年時の成績は学年30番内に収まっている。そして外見も薄〜く化粧はするけど髪は染めてないしスカートもそんなに短くはない。先生にとっては、模範的な生徒であるはずだ。この評判を落とすことなく、良い推薦狙えたら良いんだけどね。
はぁとため息をつきながら勉強する。

金曜学校から帰った瞬間に"やってしまった"ことに気付いた。英語の重要なプリントを学校に置いてきてしまったようだ。結構プリントを多用する先生だからこそ、ファイルにまとめておいたのに...私としたことが忘れるなんて!
今から学校に取りに行く...のも往復を考えるキツイな。どうしようか。

ふとある顔が浮かんだ。荒北ってテスト前帰ったりしてるよね。アレ土曜とかに帰るんだっけ?ダメもとでメールしてみることにした。
"お願いがあるんだけど"とのタイトルから週末帰るならファイルを!と聞いてみたら意外にすんなり"イイヨ"とのこと。席とファイルの見た目を伝えてお願いした。本当荒北様最高です!そう、都合の良い時だけ煽てる私だ。


数時間経った夜の9時、メールが届いた。
"家の前に居るんだけど"

え、今!?すぐ外出るとの返信をして、バタバタと部屋着のまま外へ出る。
荒北はロードに跨がって待ってた。人の顔を見た瞬間、慌てすぎとの指摘。そりゃ人を待たせるのはいけないでしょ。
「ハイ、ご希望の品だヨ」
そう、これ!これが欲しかった。貰ったファイルを抱きしめ私は素直にお礼を言った。
背中に背負ったリュックから今帰りなんであろう。なんか申し訳ないことしたかな。
「今度ベプシ奢るね、てっきり明日かと思ったから明日お礼のベプシでも買っておこうと思ったのに」
「あー、別にいらねぇヨ」
え、あの荒北がベプシを断った!?新開君に連絡レベルの事象だよこれは。
「…分かった、受け取ってくれないなら、荒北の上履きに注ぎ込んでおく。楽しみしてるがいいよ」
「ハッ、どんな脅しだヨ!それは!」
うん!とりあえずお礼を受け取ってくれる気にはなったようだ、良かった。

そこからはこの前の体育祭の話になった。フクチャンのことを聞いたら、フクチャンの借り物障害のリンゴは自前だったとのことだ。え、普通の男子高校生はリンゴもってるもんなの?そう聞けば、フクチャンは普通じゃないからなとドヤ顔で言われた。いや、なんであんたがドヤ顔なんだよ。
体育祭の話をしながらもシュシュについては触れちゃいけない感じがした。荒北もそう思っているのか絶対にふれてこない。あーもう、なんだかよく分からないなこの状況。

ふと目に入ったロード、そういえば荒北とロードの話をするのははじめてな気がする。
「この自転車なんて読むの?」
からはじまって、少しレースの話をした。野球ならそれなりに私も話せたけど、ロードの話は未知数だ。というかロードの話をしている目の前の荒北が荒北でないような気がした。
「この色、綺麗なエメラルドグリーン?だね」
チェレステって呼ばれてる色らしい。なんとなく荒北っぽくないねった口走ってしまった。
「まぁフクチャンからの借り物のようなもんだからネ」
そうなのか。んー触れちゃいけないのかな。まぁこの話は終わりにしよう。

あ、いつの間にか話し込んでて30分以上経ってるじゃん!
荒北も親御さんが心配するだろう。

荒北にまたと言って家に足を向けたら、後ろからTシャツの首の辺りを引っ張られ
「明日夜ベプシよろしくね、みょうじチャン」
と言われた。
わ、分かったから!いきなり苦しいし、猫じゃねぇよそこ引っ張るな。そんな反論ではなくて"ヴグッ"っていう音が口からでた。

荒北は色々といきなり過ぎる。色々足りないしアレじゃ女子にもてないぞ。
あ、そういえば明日ベプシおごる予定になったな。

自室に入って、勉強を再開とはいかなくてお風呂へ入ることとした。
お風呂から出て、携帯見てみたらメールが入ってた。
"明日8時に"
まぁこれは普通に考えて夜で良いよね。どんだけベプシ、荒北に流れるているのはベプシだろうと予想される。



翌日
今日の午後は近くの図書館でミサキと勉強する予定だ。ダラダラと勉強していた午前中だった。昼食を食べて、気温もじんわりと暑くなってきている今日この頃。着るものに迷う季節だ。
勉強道具をもって、ママチャリに乗って図書館に向かう。もちろん歩きより早いので、全身に流れていく風がとても気持ちいい。そりゃ自転車にハマる人達だっているよね、荒北もいつもこんな感じなのか。

図書館に着いたと同時にミサキから着いてるよとのメールが届く。
中に入ってミサキを探す...あ、手を振ってアピールしてくれてる。図書館の奥まった机を確保してくれていたようだ。お礼を言って、勉強を始める。
時折、コソコソと勉強についての質問したりしながら勉強を進める私達。勉強についてはミサキはライバルでもある。私はどちらかといえば理系、向こうは文系なので総合の順位は似たような感じだ。分からないとこは補えるので、一年生の後半からちょくちょく二人で勉強している。そんなミサキから、今ここで?という話題が飛び出す。

「ちなみになまえさん、佐藤君の事ってどう思ってるの?」
良い笑顔で話しかけられた。

ん!?佐藤君?東堂君と一緒のクラスの?頭の中に佐藤くんが浮かんできた。
「佐藤君?え、まぁカッコ良いよね、委員会一緒だし中学も一緒だから普通には仲良いはずだけど?」
思ったままの答えしか出てこなかったので、そのまま伝える。そうというミサキ。と思ったら唸り出した、ちょっとここ図書館だから!はじだからって微妙に目立つから!
唸ってるミサキが顔を上げて、言い放った。

「さてそんな佐藤君、なまえの事が好きな噂があるのですが、なまえはどう考えるのか聞いておこうかとね」

新開くんの真似してバキュンポーズをしながら、爆弾発言をかましてきた。
え、何その寝耳に水な話。なんか顔がカァっと赤くなる感じがする。
なんて答えればいいんだ全く。
「う、全く意識して無かったんだけど...つかそんなこと言われたら次から意識しちゃうかもじゃん!!」
そしてあくまで噂でしょっと追加で言う。
「そりゃ、それも狙いだからね〜」
あの語尾に音符マークが見えるんですけど。楽しそうにミサキは話を続ける。
「フフ、これから夏だし浮かれていられるのも今年までだろうし、くっつくのには良い時期かと思ってね」

「お節介、自分のこと考えなよー。…そりゃ興味ないわけないけどさぁ」
ペンをクルクル回しながらブツブツ言う。

「こんなものもってて何いってんの!?」
フニっと横の席から私の胸に指を突き刺してきた。
「ぁっ、ちょ、何!?」
思わず今までより大きな声をあげてしまったので近くの席の人に睨まらた。ペコペコしてすいませんと謝る。さらに、小声で話を続ける。

「本当何すんのよ?」
「フン、羨ましい。夏場はやっぱり薄着なのよ!少しくれたって構わないじゃない」
「いや、言うほど大きくないよ?」
「あたしよりはあるし、着替えの時に確認してるから」
んな人の着替え見てるなよ!ミサキはモデル体型だからね。目指せCって言ってたっけ、でもこっちからしたら身長が欲しいとこなんだけど。

「でも、なんかエロいって一部女子には評判デス」
なぜカタコト?
そしてそれを武器にしないとかあり得ないとか言いながら人の胸をつついてくる。公共の場でそんなことするな。ミサキの手を叩きながら反論する。
「立派なモデル体型が何言ってんの」
皆羨ましがっているんだぞ。ていうかあんたといるとナンパが多いんだよ。

要はアレでしょう?結局は夏を楽しみたいってことでしょ?これから文化祭もあるし、海も行きたいよね。
「夏が始まるね」


佐藤君は頭の片隅に追いやられた。





- 9 -

*前次#