翡翠色の憂鬱


…どうしても、手に入れたい奴がいる。そいつは俺と違って、誰もが癒されちまう雰囲気を漂わせていて、いつもにこにこ笑っている。


俺と正反対な君に、惹かれた。





気がつけば、彼女を目で追っている。





「…晋助、聞いているでござるか?」


「ん…あぁ」


「その様子だと聞いていないようでござるな…」





はぁ、と隣でため息をつく万斉など気にも掛けずに放課後の教室の窓から覗く晋助の瞳に映るのはただ一人の少女。





『神楽ちゃーん!早く早く!』


「待つネっ菜子!」


『ふふっ』





風に吹かれ、髪を押さえながらも楽しげに駈けていく少女。名前は花村菜子…晋助が恋い焦がれている相手である。





「相も変わらず花村殿に一途なようでござるな」


「…うるせェ」


「その割りには上手く話せてないようでござる」


「うるせェよ」





話す?アイツと?何をだ?…好き過ぎて何話せばいいかなんてわかんねェんだよ。アイツを目の前にしたら頭ん中真っ白になっちまうんだよ。


こんな想いは、生まれて初めてだった。




翡翠色(ひすいいろ)の憂鬱
(君を目で追う自分に戸惑う)







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