はじめまして
「銀ちゃんの破廉恥!何考えてアルね!!」
「そ、そうですよ!泣いてる女性に何しようと……!?」
「はぁ?お前等一体何言って……」
ムッ、と冷たい視線で銀時を睨んでくる少年少女に戸惑う銀時。が、そんな銀時のことなど構わず、二人は冷たい言葉を浴びさせるのだった。
「近づかないで欲しいアル!銀ちゃんには心底失望したアル!」
「いくら適当すぎる人だからって、こういうことはしない人だと思っていたのに……」
「ちょ、お前等!何勘違いしてんのよ!?ちょ、ま、菜子ちゃあーんっ!こいつ等に説明してくれ!!」
どうやら二人は変な風に解釈したようで、銀時の言葉に耳を傾けようとしない。視線すら合わせようとしない。慌てて銀時は菜子に泣きついてきた。
それに応えるかのように菜子は口を開いた。
「初めましてお二人さん。私、花村菜子と申します。彼、銀ちゃんとは昔ながらの幼なじみなの。よろしくしてね」
「「銀(さん・ちゃん)の………お、幼なじみーっ!?」」
にっこりと満面の笑みを少年少女に向けると、二人は驚愕の声を上げる。…どうしてそこまで驚くのか菜子自身わからなかったのだが…二人からすれば、あの万年ぐうたらばかりしている銀時にこんな美人の知り合いがいたことは予想外過ぎたのだった。
「…こんな感じでいい?銀ちゃん」
「さすがは菜子…俺が育て上げただけはあるわ〜。お母さんも嬉しいよー!!」
「誰がお母さんよ、誰が」
母親面をする銀時に呆れつつも、二人の誤解を解くことはできたことに満足する。
「はぁ、ビックリしましたよ。そうですよね、いくら銀さんでもそんなことしませんよね」
ふぅ、と一息つき、ホッとしたような様子を見せる眼鏡を掛けた少年…志村新八。
「全くネ!人騒がせでアルよ!」
「てめぇらが勝手に勘違いしたんだろーが!!」
チャイナ服を来た少女…神楽。
彼女の言葉に思わず突っ込みを入れる銀時。その様子があまりに面白くて、思わず菜子は口元を緩ませた。
「けど…さっき菜子さん泣いてませんでしたか?」
「あ…」
「馬鹿新八!そこは普通触れねぇだろ!?だからモテないんだよ、お前は!!」
「そうネ!女心を全く理解していないアルよ!だからお前はダメガネなのネ!」
「ぐっ……そ、そこまで言わなくても……!」
神楽、銀時の言葉攻めに本気で凹み出す新八。いつもこんな感じで苦労しているのだろう。菜子は少なからず同情し、言葉を掛けてやる。
「変な心配掛けてごめんね新八君。ちょっと昔の話をしていたら思い出しちゃってつい泣いちゃっただけなの。だから気にしないでね」
「そ、そうなんですか…すみません、僕……」
「ふふっ大丈夫よ」
「新八この野郎!何頬を赤くしてやがる!!言っておくが、菜子は銀さんのもんだからな!?手ェ出したら承知しねぇぞ!!」
「銀ちゃん、誰が誰のものだって?」
あることないことを口走る銀時に釘をさすように菜子は告げると、銀時は「そんなの決まってるだろ〜」などと、いつものだらけた口調で話出した。
が、今はそれよりも二人に話さなければならないことがある。
「えっと…二人はこの万事屋で働いているんだよね?」
「そうアル!」
「実は私もしばらくここでお世話になることになって……と言っても住む場所と働き場所が見つかったらすぐに出ていくからほんの少しの間だけど……いい、かな?」
「そんなの全然いいアル!大歓迎ネ!」
「そうですよ!たくさんいた方が楽しいですしね!」
(よかった…みんないい人で…)
ほっと安心し、胸を撫で下ろす菜子。何となくだが、どこか銀時に似ている気がする。
「その代わり、と言ってはあれなんだけど…ここでお世話になる以上…家事全般は私に任せて!」
「まじでか!?わーいっやったーアル!これで豆パンばっかの毎日とはお別れネー!」
神楽の一言に、菜子は瞳を丸めた。
「っ、銀ちゃん!?もしかして二人に豆パンばっかり食べさせてたの?」
「バッ、ちげぇーよ。こいつらがどーしても豆パン食いてぇって言うから銀さんは仕方なく……」
「スーパーでいつも安い豆パンばっか大量に購入してるのはアンタだろうが!!」
「…呆れたわ。銀ちゃんに正しい食生活しろ、だなんて無理な話なんだろうけど。ここでお世話になる間はそんな偏った食生活はさせないから安心してね?」
菜子の言葉に三人は喜びの声を上げる。それを見て、菜子はまた嬉しそうに笑みを浮かべたのだった。
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