守る側、守られる側
「私のせいで、危険な目ばかり遭う晋助を……見てられなかった……!」
私のことを庇って、晋助は傷を負う。その繰り返される日々に胸を痛めずにはいられなかった。
『晋助!!…ごめんね、私のせいで……また、怪我を………』
『ハッ……んなこと、菜子が気にする必要はあるめぇよ』
『…やっぱり、私も晋助と一緒に戦っ』
『お前は何もすんじゃねぇ…』
『だ、って…そんなこと言ったら晋助が……!』
『愛する女一人くれェ守れねェでどうすんだよ?…お前は俺の傍にいりゃいい…』
『…っごめんね…』
『…馬鹿、そこはごめんじゃねぇだろうが』
『…だって……ごめん、ごめんなさい…晋助……』
晋助の私を想ってくれる気持ちが、ちゃんと伝わった。いつもいつも、私のことを庇ってくれた、守ってくれた。彼の大きすぎる優しさで、私は十分幸せだった。……十分、過ぎた。晋助の優しさは。
もう、彼を解放してあげなければならない。そう、思った。
「…私、やっぱり足手まといなんかになりたくなくて………気が付いたら、晋助から逃げてた…」
この世界を恨む晋助。世界を全てブッ壊そうとしている晋助。そんな彼の隣りに、私はいてはいけない。邪魔になる。彼の道の妨げになる。
そんなの、嫌だった。何か彼のために役に立ちたかった…刀を持たない私に唯一出来たことは、晋助を自分から解放してあげることだった。
「ホント、そういうところも変わってねぇなー」
今まで、菜子の話をおとなしく聞いていた銀時が口を開いた。
「え……?」
「そーゆー…不器用な優しさが、だよ」
くしゃ、と銀ちゃんの手が私の頭を撫でた。そんな久しぶりの感覚に、菜子は昔を思い出し、今と比べてしまう。ふと気が付けば、一筋の涙が頬を伝っていた。
「っや、ごめ……」
「謝んじゃねぇよ!…俺と菜子の仲だろ?」
…今日、銀ちゃんに会えてよかった。ずっと、一人で抱えていたものが少しだけ軽くなった気がする。
(ありがとう、銀ちゃん…)
…と、そのとき。万屋の玄関が外から開けられた。
「銀さーんっ買い出し済み………えぇ!?」
「なっ、銀ちゃん!何してアルか!?ヤラシイ目でその女の人に何しようとしてアルかーっ!!」
若い、二人の男女が騒がしく入って来たのだった。
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