私、この島から出る
両親が事故で亡くなり
親戚にイジメられながら育った。
この、親戚が威張っていられるのも
私の両親の財産のお陰なのに
私と妹は、新しい服も買ってもらえない
食べ物は、余りもの。
余らない場合は、ご飯抜き。
そんな当たり前の暮らしに
別れを告げる日が、一刻一刻と近付いてきた。
両親は、こうなる事を見越してたのか
家の地下の私と妹の部屋に(両親が生きていた時は、ホームシアターだった。)隠し通路を作っていて、その奥に、親戚に渡った数倍の遺産があったのを見つけた。
遺産と言っても、私と妹名義の通帳だった為、遺産相続とかで、親戚にはバレることは無い。
通帳と、何かの鍵…。
そして、手紙。
その手紙を開く前に、妹を、この場所に案内しようと思った。
妹が、私のために、食堂から、ロールパンをこっそり持ち出して、戻ってきた。
「お姉、ご飯抜きだったでしょ?」
「うん」
今日は、学校の用事で、ほんの数十分前に帰宅した。
親戚が勝手に決めた門限よりも遅くなったからと言う理由だけで、ご飯を貰えなかった。
「お姉が、朝作っていった料理なのに…あの人たち全部食べて…」
妹は、怒っている。
「え?リンも食べたんじゃないの?」
「あたし?んーん?だって、アンタみたいな子供にはこんな高級なもの…って」
「リンのリンの誕生日だから作ったのに」
私はとても悔しくなった。
今だって、妹の誕生日プレゼントを隠す場所を探していて、偶然、隠し通路を見つけたと言うのに…。
「ねえ、リン、今から行く場所、絶対に秘密にできる?」
「え?どこに行くの?」
「いいから」
「うん…」
「その前に、そこの鍵を締めないとね」
「え、でもここ鍵締めると、あの人たちに怒られる…」
「いいから、締めて」
「何処かに行くんじゃないの?」
「だからだよ。」
「どういうこと?」
そんな事を話していると、ドダドダと煩い音を立てて、階段を下ってくる音がした。
「リン、お願い」
「わ、わかった」
妹は、鍵をかける。
ここの鍵は、外からは開けられない作りになっている。
私達の両親は大の映画好きで、誰かに邪魔をされる事を嫌っていた為、そういう仕様にした。
だけど、隠し通路がある事を考えると
きっと、それだけじゃないのだろう。
ちなみに、普段は、普通に外の音も聞こえるけれど、映画モードにすると、外の音が聞こえなくなる。
元々、中の音は外には聞こえないようになっている。
「お姉…どうやって」
「あのね、リン、私さっき、隠し通路見つけたの」
「隠し通路!?」
妹は、驚く。
「そう。其処に連れて行くから、付いてきて。」
「うん」
妹の手を握り、隠し通路へ向かう。
きっと今頃、私達の部屋の前で、暴れているだろう親戚を思い浮かべる。
隠し通路へ入り、そこから奥へ…
私の手には懐中電灯。
薄暗い通路を抜けると、突き当りに、扉があった。
そこを開けて、電気を灯す。
妹に通帳を手渡す。
「私の?これ、お姉が作ったの?」
「違うよ。私にそんな財産はないもの。」
そう言って、通帳を開かせる
「…え…」
通帳には、驚くくらいの数字が記載されている。
「それだけじゃないの。」
鍵を手渡す
「なんの鍵?」
「それは、今から、この手紙を開封したら、書いてあると思う。」
「パパの文字…」
「そう。それ、パパとママからの財産だよ。しかも、遺産相続ので文句言われない為に、私達のためにわざわざ」
「なんで?パパたち、死んじゃうって知ってたのかな?」
「それは、分からないけど、もしかしたら、ずっと先の将来のためだったかもしれない」
「でも、もし、ここに気が付かなかったら私達に渡らなかった…」
「そうでも無いよ。だって、この通路、私達なら気づくはずだから」
「え」
「昔、隠れん坊したでしょ?その時、パパをずっと見つけられなくて、ママが、もう一度、数を数えたら出てくるからって言って、私とリンの二人で10まで数えたら、パパは、本当に目の前に現れた。その事を忘れなければいつか、気付くって分かってたんだと思うよ。」
「……」
「リン、手紙を開けるね」
「うん」
手紙を開封し、読み始める
【いちご、りんご、君達がこの手紙を読んでいるということは、隠し通路を見つけられたんだね。おめでとう。それと共に、私達に何かあったのか、もしくは、君達が旅立つ時が来たんだね。君達はきっとこの島から離れて、自分達の住処を見つけるはずだ。その為に、私達の船を譲ろうと思う。言っておくけれど、お古じゃないよ。きちんと、君達のために作った船だ。いちご、君が私の言う事を、守っていてくれていたら、きっと、君は船の免許を持っているはずだ。とは言え、自動操縦と言うハイテクな性能付きだから、もし、免許を取れていなくても、何とかなると思う。が、自動操縦も完璧じゃない。だから、もし、君が今、旅立とうとしていても、船の免許を取ってからにしてほしい。その資金も含め、通帳に幾らか入れておいた。もし、私達に何かあって、これを読んでいるのだとしたら、きっと、親戚が好き勝手しているんだろうね。 その場合、きっと船の免許を取れていないと思うが…パパの知り合いに、3日で船の免許を取らせてくれるように頼んである。その住所は別紙に記載しておくから、行ってくるといい。君達の門出を見守れないのは辛い。だからこそ、自分達の事を大切にしてほしい。愛しているよ。パパ、ママより】
「パパ…ママ…」
リンは泣き出した。
17歳の私と違って、リンは、まだ10歳だ。
「ねぇ、リン。私と一緒にこの島を出よう。たくさん苦労させるかもしれない。けれど、此処にいるとあの人達にずっとずっと苦しめられる。だったら、私達を知る人がいない街に行って、私達だけで暮らそう?」
リンは、少し渋って、頷いた。
「お姉は…親友の蜜柑さんと別れるの平気なの?」
そう言われ、少し黙ってしまった。
親戚のせいで、数ヶ月前まで当たり前に使っていた携帯電話を解約させられてしまって、親友の蜜柑と話せるのは学校だけになってしまった。
早めに出ていくと言っても、学校だと、この家の娘が私を見張っている。
まるで、何かを知っているかの様に。
いや、知らないと思う。
知らないのだとしても、逃げ出さないように、見張っているのだろう。
余計な事を言わないように、見張っているのかも知れない。
「…リン、寂しいかもしれない。でもね」
リンはリンで、リンの親友で
私の親友の蜜柑の妹の檸檬ちゃんと離れたくないのだと思う。
唯一の私達の味方。
「我儘を言えないの。それに、この街を出たら直ぐに携帯電話買うから。それで、連絡を取ればいいよ。」
「……でも、前の携帯取り上げられてるし…使えなくても、写真とか見たかったのに…」
「船の免許を取るのに、最低でも3日は掛かる…直ぐは出ていけない…その間に、檸檬ちゃんに連絡先を聞いておいて…」
「…うん…そうする…」
「後はバレないように、荷物を運び出さなければ行けないのよね…」
一番の難関。
「パソコンは、学校行く時にカバンに入れて…」
「荷物を運び出さなければって…結局その日に運ばなければなんだよね?」
「パパが船を置く場所を頼んでると思うから、其処に先に置かせてもらおうと思って。免許を取れたらすぐに旅立てるようにだから…3日で…ん…難しいか…」
「私、ランドセル荷物いっぱいだから、荷物持っていけない…」
「私も寄り道できないのよね…あれが見張ってるから…」
「…船の免許、どうやって取りに行くの?」
「あ!そっか。」
「アレが塾行ってる間に…荷物を持って船の免許を取りに行こうと思ってて、そのついでに荷物を置きに行けばいいんだ。」
「お姉がイキイキしてる。」
「ふふふ。だって、此処から出られるのよ。パパとママの家から離れるのは辛いけど、最悪な状況から抜け出せるなら…」
「うん。そうだね…私も決めた。檸檬と別れるのは辛いけど、あの人たちから離れられると思うと耐えられる。」
「……船の免許…3日で取れるようにってあるけど…場所が分からないんだよね…他に手紙は…」
「これじゃない?」
リンが、リンへの手紙を見せる。
「地図?」
「うん。困ったらここに行きなさいってある。」
「あれ、この場所…」
「檸檬の家?」
「明日、蜜柑に聞いてみよ。」
通帳と手紙を元の場所に戻し
隠し部屋から出て、
シアタールームに戻り
鍵を締める。
「さあ、リンどうしようか?」
「何が?」
「あの人たち、まだ暴れていると思うのよね…」
「出られないね。」
「まあ、ここの壁は他よりも頑丈になってるし、壊せないと思うのよね。マスターキーも無いし」
「出られないね」
「まあ、幸いブランケットはあるし。保存食もさっき、隠し部屋で見つけた。」
「いつの間に!」
「さっきだって。」
「明日が怖いけど、今は寝よう…」
「トイレもあるし…お風呂は無いけど…汗ふきシートはあるから…起きたら拭こう」
「う…ん…」
そうして二人は
シアタールームの椅子を倒して(リクライニング)眠りについた。
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