着々と準備。
漢字親戚に気付かれないように
イチゴは、蜜柑の家に向かった。
そうして、理由を話すと
蜜柑の両親は、船の免許を取らせてくれると言った。
蜜柑の父親は、免許センターの職員で、何かあった時、もしくは、イチゴが、高校を卒業した時に、免許を取らせてほしいと頼まれていたのだと言う。
高校を卒業した後には、通常期間で
何かあった時には、3日でと言われていた。
そして、今回は“何か”あった時なので
3日間で完璧に免許を取らせてくれるという。
「船の在り処ご存知ですか?」
そう聞くと
蜜柑の父親は、
「知っているよ。この先に岬があるだろう?あの場所に、造船所があるだろう?其処に、頼んであるんだ。…だけど、流石に急いで作るとしても、数ヶ月掛かる。あの場所の親方が何か気づいて、土台だけでも作っておいてくれると良いんだけど…。イチゴちゃん達のは特殊な船だから…」
「特殊?自動運転以外に?」
「ああ。女の子が乗る船だから、危険が無いようにと、普通よりも頑丈に、そして、使いやすく作るようにと、君の両親がお願いしていたんだよ。」
「ベッドルームに、インターネットも完備させてたわね…」
「…数ヶ月…」
「ちょっと待っていてくれるかい?親方に連絡してみるよ。その間に、イチゴちゃんは、このテキストを見ていて」
「ありがとう御座います。」
イチゴは、船の免許のテキストを開く。
蜜柑の父親は、部屋から出た。
そのときに、蜜柑と鉢合わせした。
「ねぇ、パパ?なんでイチゴが二人に会いに来てるの?」
「あー…ええと」
「ぱーぱ?」
「…パパの口からは言えない事なんだ。でも、今イチゴちゃんも手が離せないし…」
「手が離せない?何をさせているの?」
「ごめん。パパこれから用事があるから」
蜜柑の父親は、外へ出て行った。
「あ!ちょっと!」
「蜜柑、ちょっとおいで」
蜜柑の母親が、応接室に迎え入れる。
「イチゴちゃん、ちょっと休憩ね。この子、多分言わないと何も納得しないから」
「イチゴ、何してるの?」
「…此処から出ようと思って、船の免許取ろうと思ってて。船は前に頼んであるみたいだし…」
「出る?船はある?どういう事?」
昨日の事を掻い摘んで話す。
「私も行く。」
「蜜柑?」
「イチゴが行くなら私も行くから!」
「パパが許さないわよ?」
「私にとってイチゴは大切な友達なの。掛け替えない。」
「蜜柑の気持ちは嬉しいけど」
イチゴは、断ろうとした。
「絶対に離れないからね!」
「蜜柑は、この街で進学が決まってるんでしょ?」
「そ…れは」
蜜柑は口ごもる。
「…リンゴちゃんは?どうするの?」
「勿論リンも連れて行くよ。リンはリンで檸檬ちゃんに伝えてるんじゃないかな。」
「なんで!?どうして?あの家は…イチゴの…イチゴとリンゴちゃんの物でしょう?勝手に住み着いて…あの人達は住む権利がないはずでしょう!?」
「そうね。だから、私が出て行ったあと、追い出されるのが目に見えているけど、そして、あの人達の絶望した表情を見たかったけれど、それは出来そうにないわね。」
「イチゴは、甘えなさすぎなんだよ!なんで言ってくれなかっ」
「だって、船の事とか、両親が残してくれた財産の事知ったの昨日だもの。」
「は」
「昨日。隠し部屋を見つけて、船の鍵と両親の財産と手紙を見つけたの。もしかしたら、両親の死には、あの人たちが関わっていたのかもしれないと思うような内容もあった。それに…そろそろ限界なの。」
「限界…?」
「私はいいのよ。でもね、昨日……リンの10歳の誕生日だったの。リンの為に朝食を少しだけ豪華にしたの。それなのに、あの人たちは、「豪華な物を口にするな」って言ったのよ!リンの為に作ったのに、リンは一口も食べられなかった。私がアルバイトして貯めたお金も全部奪われ、携帯も本も全て奪われ、そのくせに、少しでも門限を破ったり、呼ばれてもすぐに行かなかったら、食事抜きよ?もう無理。私はいいのよ。」
「イチゴ……やっぱり私も行く。イチゴはリンゴちゃんの事になると無茶するから…私が居ないと!」
「でも」
「でもも何もない。行くって決めたの!パパが何言っても一緒に」
「…駄目。」
「パパ……」
「駄目に決まっているだろう?」
いつの間に戻って来たのかは判らなかったけど、蜜柑の父親が、戻って来ていた。
「なんで!?」
「お前は、進学が決まっているだろう?」
「そうだけど」
「決まっているのに、やっぱり進学は辞めます。なんて報告したら、迷惑なんだよ。」
「そうだけど!」
「進学して、その後きちんと卒業してから、イチゴちゃんが住むことになった場所に行けばいい」
「でも…あと四年は掛かるんだよ…?その間イチゴ1人、大変な思いさせたくない」
「大丈夫だよ。その間にイケメンな彼氏作って幸せになるから」
ニコリと微笑むイチゴ。
「私も彼氏欲しい!」
「蜜柑!?まだ結婚は早いぞ!?」
狼狽える、蜜柑の父親。
「パパ、結婚とは言ってないわよ?」
蜜柑の母親は苦笑いする。
「……あの、そう言えば船の件はどうなりましたか?」
イチゴが恐る恐る聞くと
「それが、造船所に行ったら、イチゴちゃんの両親が亡くなって直ぐ、準備を始めたらしく…後は試乗が終われば完成らしい。勿論何処にも不備が無ければ…だけど」
「試乗っていつですか?」
「明日にでも試乗して走らせてみるって言っていたから、イチゴちゃんが免許を取り終えて直ぐに出港はできるはず。…不備が無ければ」
「…まぁ、不備はすぐに見つかる訳でも無いですしね…」
「とりあえず、明日筆記、明後日操作方法を教えて、明々後日実技って事でいいかな?合格発表は当日にするから」
「…あれ、3日で試験終わらせるんじゃ…」
「とりあえず今日はテスト範囲を覚えてもらわないと…って事で今日はノーカン」
「試乗が終わって、直す場所がなかったら、荷物の運び入れ進めていいですか?出発当日に、大量の荷物持ち出すとバレかねないので…」
「そうだね。まあ、最低限のものは揃ってるけど、服とかは無いから」
「最低限のもの…?」
「キッチン用品、掃除用具、加湿除湿付き空気清浄機、パソコン、寝具、洗濯機」
「充分ですけど!?」
「ああ、後、携帯電話契約書。本体を選ぶのは、この島を出てから」
「本当に最低限の物で、この島から出られそう…」
「食品に関しては、当日運び入れるから」
「え、そんな…」
「一応、乾麺、カップ麺、保存食はあるけど」
「それだけでも十分ですよ!?」
「これはね、イチゴちゃん。君のご両親から託されてる物なんだ。」
「両親から…」
「だから、引き取って欲しい。」
「…わかり…ました…本当に色々ありがとう御座います」
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