あなたの熱が恋しいのだ
ワンルームのこじんまりとした年季の入ったこの小さな小屋。
机と小さなランプがあるだけの余計なものは何も無く殺風景で、がらんとしている。1歩踏み出しただけでギシリと壊れそうな音が鳴る。
イスなんてものはないので、壁に寄りかかって座ると、「足は大丈夫か?」と眉をひそめながらエレンは──の隣へと腰をかけた。
「うん、前と同じくらいだからたぶん軽傷だと思うんだけど...」
「そうか、良かった」
自分のことのように、ホッと息をついて安堵の表情をしたエレンに──は心底申し訳なくなった。
「ごめんねエレン。巻き込んじゃって、」
「別にそんなこと気にすんな。無事だっただけで良かった、...お前抜きでマルコの班が帰ってきた時はまじで焦ったからな」
そう苦笑いしていったエレンに──は先程会った時のエレンを思い出した。必死に探してくれたことなんて明らかで、それを思うだけで心がじんわり暖かくなる。
いつもエレンは自分が怪我やピンチの時に駆けつけてくれる。大事に思ってくれてるのかな、と自惚れてしまうほどのその行動に──は気恥しくなった。
きっと1人で探しに来てくれたエレンは待機命令に背いただろう。怒られるであろう未来が安易に想像つく。そうしたら教官に言おう、エレンが来てくれて助かったことを。
「ね、エレン。来てくれて本当にありがとう。...エレンがいてくれてよかった」
「...おう」
今まで避けられて悩んでいた事なんて頭から抜けさっていた。ただ、エレンへの愛しさに身を委ねて、自分より少し高い位置にあるその肩へと頭を預けた。
シン、と静まり返っているこの部屋に──とエレンの呼吸音だけを感じた。
決して気まずい空気なんかではなく、もはや心地よいこの空気に──は目を閉じていた。
すると、ふと思い出した出発前のエレンの言葉が──の脳裏をかすめ、頭を肩から離した。
「そういえば、今日の夜の話ってなんだったの?」
「あ、ああ...いや、」
歯切れが悪いエレンの反応に──は首を傾ける。
数分の沈黙があった後、エレンは──をじっと見つめた。
「...」
「...」
「俺はお前のことが好きだ、──。...──は俺のこと、その、どう思ってるか知りたくて」
いい終わったあとに少し目線を外したエレンの頬は、ほんのりと色づいていた。
そんな始めてみるエレンの可愛い顔に──はつい、くすりと笑った。
「そんなの決まってるじゃん...」
「おい、なに笑って」
「好き」、そう言ってエレンの染まった頬に手を当てた。
するとほんの一瞬驚いた様子のエレンは、すぐに口角を上げた。
そんな変化に気付いたのもつかのま、エレンは──の唇を掠め取った。
ちゅ、と弱々しくリップ音がなり息が重なった。
今までの時を埋めるかのように降り注がれるキスの雨に──は息が止まりそうだった。
「俺も好きだ」
顔が離れた後に、はにかむように言ったエレンに──は心臓を締め付けられた。
こつんとおでこがくっつけられ、視界いっぱいにエレンが広がる。
エレンは愛しそうに見つめる中、そんな恥ずかしさから──は視線を外した。
「でもなんか...今さらじゃない?」
散々キスしてきたくせに、と──が呟くとエレンは顔を離し、少し考えたあとにきまり悪そうに頬をかいた。
「いや、ライナーに怒られちまって」
「ライナー?」
どうやらライナーにお互いの気持ちを確かめてからにしろ、と言われたらしい。
だからライナーは調理当番の時に何か知っているようだったのか、と──は昔の謎が解けて1人心の中で思った。
「ムードがどうとか言われたから色々考えてたんだよ...。だから思いつくまで──と極力会わないようにしてた」
会ったら触れたくなっちまうから、とさらりと発せられたエレンの言葉に──は嬉しさと恥ずかしさで、胸が高鳴ったのを感じた。
そんなこと言われてしまえば避けられたことなんてどう考えても怒れない。
むしろエレンが自分のことを考えてたなんて言われれば嬉しさすら湧く。
少し前までは最悪だと思っていたが、この状況に感謝すらしてしまいたいくらい、どうしようもないくらいエレンが好きだ。
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