ああ、ほら、またね。
体中からズキズキと悲鳴をあげている。
そんな痛みから徐々に視界は開いていく。
「...っ、いった、!!」
ズキリ、と一層針が刺されたように強まった足首を衝動的に抑える。おそるおそるそこを見れば見事に腫れ上がっていた。
どうやらこの前の立体機動の時にひねってしまった部分をまたやってしまったらしい。
捻挫は癖になってしまうことがある、と聞いたことがある。
このタイミングで最悪だ、と今年1番といっていいほど気持ちが落ちる。
とりあえず患部を手持ちのハンカチで、習ったばかりの応急処置を施した。
そして気を失っている時間は短くなかったようで、朝すぐに出発したはずなのに、もう日は沈みかけているようで薄暗い。
本当に自分の悪運というか、ドジ具合には呆れる。
散々ジャンに気をつけろと言われていたのに、とジャンの顔が頭に残る。
離れた班員のみんなは無事だろうか、と余裕もなく考えるがそれより自分のこれからが途方に暮れている。
ずっと座っている訳にもいかず、怪我した足に負担がかからないようにゆっくり立ち上がる。
体の打撲の痛みで思わず顔が歪む。
地図無し、足の捻挫、空の暗さ。
そして仲間もいない。この心細さはじわりじわりと──の気持ちを蝕んでいった。
こんな大きな山で1人だなんて、考えただけで孤独すぎる。泣きたくなる衝動を必死に堪えた。
「──、!!!おい、無事か!?」
「っ、!!」
頭上から聞こえたエレンの焦った声にすぐに反応して見上げれば、少し上の道沿いからエレンが斜面を下ってきているのが見えた。
「エレ...」
「──!大丈夫か?!ったく、なにやってんだよ!!!心配しただろ、...」
汗をかいて息が切れているエレンは、どうやらそれほど必死に探してくれたらしい。肩で息をして呼吸を整えているエレンを見て、涙腺が緩まる。
先程までどん底にいた気分だったのに、エレンを見た瞬間にこんなにも気持ちが軽くなった。
あまりの安心感と、力んでいた体の力が抜けて、何かの糸が切れたかのようにぽつりと頬に涙が伝った。
「...」
「...っ!悪い、泣かせるつもりじゃ」
「ちが、安心しちゃって、...っ!ごめ」
ぽろぽろと溢れてくる涙を袖で慌てて拭いとろうとする──に、エレンは少し戸惑ったあとに、──をぐっと抱き寄せた。そのまま、子供をあやすように優しく背中を叩いた。
暫くされるがままだったが、安心感から徐々に頭がクリアになり、つい声を上げてエレンから勢いよく離れてしまった。
そんな──を気にとめるわけでもなく、「大丈夫か?」と声をかけたエレンに、申し訳なさそうに頷いた。
「とりあえず、雨も降りそうだし屋根があるところに行った方がいいな」
「屋根って...そんなとこ近くにあるかな?」
「さっき来る途中にあった。少し登らなきゃいけねえけど、動けるか?」
「大丈夫!頑張るよ」
空の暗さから、無闇に動けない。そんな問題にエレンが見つけてきたらしいそこに、ひとまず避難したい。
未だに静かに痛む足を、もう片方の足でバランスをとる。
当然ながらこの足で1人で斜面を上るなんて無理で、エレンの肩を借りるしかない。
こんな時にこんな事を考えてしまう自分が嫌になるが、ガッシリと腰に回されたエレンの腕や、力強く支えてくれる体に寄り添うように歩くことに不覚ながら胸を高鳴らせている自分がいた。
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