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久しぶりの休暇。特にする予定もなく自分の部屋の掃除をしようと始めてから数時間たった。
ジッとしていると余計なことを考えてしまうので、何かしていた方が楽だ。

ベッドの掃除に取り掛かろうとすれば、途端にリヴァイ兵長の顔が浮かんできた。
──は邪念を取り払うかのように頭を勢いよく振ったが、どうも上手くはいかない。
はあ、とため息をはいてピカピカになったように見える部屋を、達成感に浸りながら──は扉を開けて外に出た。

チカチカと容赦なく照りつける太陽が直接当たり、思わず目を細めて額に手を当てた。

「あ、モブリットさん」

行くあてもないが、気分転換にゆっくりと歩いていれば、モブリットさんがげっそりとした顔で歩いているのを発見する。
来た方向から考えて、どうやらハンジさんの実験を手伝っていたのだろう。

「──さん...ご無沙汰してます。今日は休暇ですか?」

死んだ目をしているモブリットに考えもなく名前を呼んでしまったが、モブリットから話しかけてくれたことで自然と頬が緩んだ。

「はい!すごい疲れてますね、大丈夫ですか?」

「いや、まあ...はは。分隊長のおかげで寿命が縮まっていくばかりですよ…」

「それは.....お疲れ様ですほんとに」

苦笑いしながら、兵長が奇行種と言ったハンジの行動を想像すれば──はモブリットを褒めたたえたくなるくらいだ。

「モブリットさんって…仕事は出来るし気遣いも出来るし非の打ち所ないですよね.....。きっと、っていうか絶対ハンジさんに必要不可欠な存在ですね」

「え、!ありがとうございます...」

そうお礼をいったモブリットはほんのりと頬を染めた。たちまち──も自分の発言に少しだけ気恥ずかしくなり目線をきょろりと逸らす。
お互い照れてしまいむず痒い雰囲気になってしまい、──は申し訳なくなっていればモブリットがぽつりと言葉を零した。

「すみません...褒められ慣れていないもので、」

「え!いや...モブリットさんは全然自信持った方がいいですよ!ほんとに、お世辞じゃなくて、」

「あはは、ありがとうございます。──さんも優秀だって聞きますよ」

「.....ありがとうございます。...なんか褒め合いみたいになっちゃいましたね、」

モブリットからの突然の褒め言葉に、嬉しいような、恥ずかしいような、心臓がほんのり痒くて──は視線を下にした。

そんな2人を遮るようにハンジは声をかけた。

「ちょっとちょっと、なーに初々しい付き合いたてみたいな怪しい雰囲気出してるのお二人さん。もしかしてそんな関係だったの...!?そんなこと私聞いてないけど!!」

「...っ!!ハンジさん」

「分隊長!」

急に現れたハンジにビックリしているモブリットに、ハンジは頬を緩ませながら「モブリットも隅に置けないなぁ」、と近づいた。

「...」

そんなハンジに驚くよりも、──はハンジの斜め後ろに佇んでいるリヴァイの姿にすぐに目を奪われた。

目を開いて固まる──にリヴァイはゆっくりと目を合わせた。
何を思っているのか、分かりづらいリヴァイの瞳に吸い込まれるようだった。

「あれ、そういえばリヴァイ。──を探してたんじゃなかった?ちょうど良かったね」

「いや。...もう大丈夫だ」

「へ、そうなの?」

「ああ」、と低く呟いたリヴァイに、──は何も言えなかったが、自分の事を探してくれていたことに少しだけ喜んだ。
会いたくないと思っていたのに、リヴァイの顔を見ればそんな考えは吹き飛んでしまう。

「まあ──は今日休暇だからね、あんまり仕事頼んじゃ可哀想だよリヴァイ」

「...そうだな」

「さて!私とモブリットは実験の再開だ、はやく行くよ!モブリット!」

「あ、ちょっと分隊長!待ってくださいよ、!」

嵐のように去っていったハンジとモブリット、そしてリヴァイも踵を返した。
そんなリヴァイの背中を──は見つめることしか出来ずにいた。