01
「で、?次の島でのデートは約束できたのか?」

「、、できてない」

またか、と呆れたような顔のベックになまえはひと睨みし、自分の不甲斐なさに小さくため息をついた。

ベックから視線を外し、私がデートのお誘いをしたいお目当ての相手をちらりと盗み見ると、真っ赤な髪の毛を揺らし甲板でヤソップと豪快に笑っている。

もう少年とは言えない年齢だが、その純粋な笑顔はなまえの心臓に音をたてるのは容易い。

「おーおー、あんな遠くにいるお頭でもときめくたァまぶしいぜ」

「、、ばかにしてるでしょ!もう、シャンクスじゃなくて!外熱いからだもん」

「もうすぐ冬島だって言ってたぞ」

「うっ、」

分かりやすい言い訳も通じず、コロコロと表情を変えるなまえにベックは、ふ、と静かに笑った。
余裕たっぷりのベックになまえはムッと口を尖らせた。
 
「ベックの女の子を落とす力、?わけてよ!私が使うから」

「教えたい気持ちも山々だが、俺の技は女性限定なんでな。、、あの能天気なお頭に効くとは思わねえぜ」

うう、と悲しそうに泣きだすふりをするなまえの頭をため息をつきながら、ぐりぐりとベックが撫でれば、スンと元のなまえに戻る。

「私の経験値が足りないからシャンクスは気付いてくれないのかな、?もっと船に乗る前に男遊びしてればよかったかも」

「、、お前もなかなか遊んでたときいたが」

「え"!だれに!!」

「お頭から」

「いやあ!!」と絶望的な表情で青白くなっていく顔のなまえを見ながら淡々とベックは話を続けた。

「その印象があるからなびかねえのかもなあ」

「そんなベックほどじゃないもん、純粋な少女時代を過ごしただけだよ!」

「それは俺じゃなくてお前の目線の先の男に言ってやれ」

まるで子犬のように、あれは!でも!と言い訳がつらつらと出てくるなまえを横目にベックは煙草を付けた。

まさかとは思うがシャンクスに対するアピールはどの男でもやると思われているのだろうか、最悪な展開になまえは頭を抱えた。

「私誰にでもいい顔すると思われてるのかな」

「‥俺も否定できないな」

「ちょっと待って!ベックまで!?」

嘘でしょ、と驚いたようになまえは元々大きい瞳をさらに大きく見開く。そんななまえを見てベックは喉を鳴らせくつくつと笑った。

「まあそりゃ言い過ぎだが。なんだろうな、愛想がいいからななまえは。良くも悪くもってとこか」

「でもほんとに恋愛経験なんてこれっぽっちしかないよ?ベックと比べたら」

「俺と比べるな」

ピシャリと言い放つベックに、自分の恋愛経験の少なさをちいさな丸で表した右手を、ため息を吐きながら降ろした。

「ねえベック、一生のお願い!シャンクスのその誤解をといてきて?」

パン!と手を叩き、ここぞとばかりに上目遣いを使い、瞼をパシパシさせるも、相手はベックだ。
数々の女のおねだりの顔を見てきたことだろう、眉一つ動かさない。

「そんなあざとくお願いできる女が実は清楚でした、なんて信じねえな。それに一生のお願いはこの前聞いたぞ」

「う、、来世分のを前借りで!」

「その言葉は来世の俺に使うんだな」

「そんなあ」

頼み込むなまえを横目に、またピシャリと言い放つベックに、なまえは諦め分かりやすく項垂れた。







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