02
先程の話のショックがでかいなまえは他の誰からも分かるほど落ち込んでいる様子にベックは気にせず話をふった。

「それに俺に人を落とす方法なんざ聞かない方がいい。俺も本命には気付かれねえからな」

淡々と答えているが少しだけ目線を下に落としたベックに、まるで想像がつかないなまえは呆然と口を開けた。

「え、え?あのプレイボーイで有名なベックが?!」

驚きすぎて少し大声になってしまったなまえは、遅いながらも口に手を当てた。ベックはそんななまえに目を合わせ、「ああ」と静かに頷いた。
まさかそんな話を聞くとは思わなかった。ベックといえば百戦錬磨の女好きで、女性の方から声がかかることも多数だが、ベックから声をかけた女性で断られるところを見たことがない。


「そうなんだ、、。ベックに落ちない女の子なんてこの世にいないものかとおもってた」

「そうでもないみたいだな」、とまた煙草を吸うベックの横側を見つめる。
なまえの頭にはベックの良い所がぽんぽんと山のように出てくる。不思議なこともあるものだと心底分からないと言わんばかりの表情である。

「かっこよくて、頼りになって、身長も高いし、強いし、、こんなにハイスペなのに!」

一つずつ口に出して指を折っていくなまえは、真剣にベックの折り紙付きである性格を讃えた。
突如言われた己の褒め言葉を聞かされたベックが今度は目を丸くする方だった。

「そんなベックの想いに気付かないなんて相当勿体無いね、その女の子。それともベックの伝え方がたりないんじゃないの?」

「それはねェな。そいつのアホヅラを良く見てきたから相手の問題だ」

「そうなの?!もったいないな〜」と、まるで自分の事のように拗ねるなまえをベックは、他人の目からは気付かないほど些細ではあるが、愛おしそうに見つめた。

「まあ、もう気付いてもらいたいと思う若ェ考えはなくなったからな」 

確かに海賊は一つの島に滞在し続けることは滅多にない。ベックの想い人とは既に離れ離れで、相手がなにをやっているかも分からない状態なんだ、となまえはしんみりと考えた。

「そっかそっか、海賊で島から離れちゃってるもんね」

「どうだかな」

一昔前のベックであれば、ここまで話せばそのまま愛を伝えていただろうが、既になまえはシャンクスへの恋心を分かりやすいほど募らせている。
ここでシャンクスと争う気持ちは微塵もなく、不運か幸運か、なまえの唯一の相談相手になれたのだ。

昔より遥かに一緒に居られる時間が増え、自分の欲だけではなく相手の幸せも願い始められたベックは、もはやこの恋心を隠すのは容易いことであった。

「じゃあ私がシャンクスと結婚できなかったら、私がベックをもらってあげる!」

名案だと言わんばかりに手を叩き、キラキラとした目でなまえはベックを見つめた。

「そりゃありがたいな。それまで独身を貫くとするか」

ベックは大きな手をなまえの頭にのせ、数回さらさらと髪を触るように優しく撫でた。







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