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シャンクスとたわいもない話をしながら島を散策すれば、商店街の端っこの方に小さな露店があった。
様々なアクセサリーが置いてあり、ネックレスや時計もあったが、なまえの目に止まったのはキラキラとした控えめで小さな宝石が一粒ずつついているリング。それはなまえの心を鷲掴みにした。
たしか上陸する前に誰かがここは宝石が有名だと騒いでいた。
ベックに、「宝石目当ての海賊達がいるかもしれないから気をつけろ。まあお頭といれば平気だと思うがな」、と釘を刺されたのをぼんやりと思い出す。
「こりゃ綺麗な宝石だな。なまえに似合いそうだ、買ってくか?」
熱烈ななまえの視線に気付いたシャンクスはなまえの後ろから出店しているテーブルを覗いた。
一番気になったリングの名札をぺろりとめくり確認すれば、普段自分で買い物をするより0が何個も書かれてあるその値札に、首をゆっくりと横に振った。
「んーん、高価なものだし‥がまんする」
名残惜しいが、シャンクスの腕を引っ張り他の店へと足を進めようとするも、体は動かない。
不思議に思いシャンクスを見上げれば、「これを一つ頼む」とお店のおばさまに分かるようにリングを指差した。
「えっ、」
「俺からのプレゼントだ」
毎度あり!と元気よく声が聞こえた途端にあれよあれよとおばさまに指のサイズを測られる。
「受け取れないよ、」と微かな抵抗も虚しく、シャンクスは既に店員へと値段通りの札束を渡し諦めろと言わんばかりの笑顔で満足げに頷いた。
なまえの右薬指ぴったりの指輪をはめられ、おばさまは満足そうに「お幸せにね」と大きく手を振りながら見送られた。
「待ってシャンクス、さすがにお金払わせて」
「これは俺の我儘に付き合ってくれた礼だ。一番初めに見せてもらえたからな」
洋服ちゃんと似合ってるぞ、と褒め言葉もプラスされればなまえは嬉しさで震え上がりそうだ。
「ほんとにもらっていいの?」と再度確認し、自分のキラキラと輝きを放つ指輪を見つめ、何度も何度もシャンクスにお礼を伝えた。
初めてつける高価な宝石のアクセサリーは年頃のなまえの心を動かすのは簡単だった。
大事そうにリングがついている右手を左手でぎゅっと押さえて無くさないように祈った。
「わたし幸せすぎて今日死んでもいいかも」
「そうか、そんな喜んでもらえるとは贈ったかいがあるなァ」
毎日付けろよ、とシャンクスに声をかけられれば「当たり前じゃん!」と少し大きめの声で頷いた。
子供のように嬉しがりはしゃぐなまえを見て、シャンクスは満足そうに笑った。
指輪を贈られただけでも嬉しいのに、相手は意中のシャンクスで、腕も組めて、なまえの想像していたデートより遥かなときめきと幸せになまえはいてもたってもいられなくなり、シャンクスの腕へとお礼の気持ちもこめて、ぎゅうぎゅうと強く抱き付いた。