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楽しい時間はあっという間に過ぎる。
リングを貰ってからもフラフラと島を観光して、シャンクスに何度も惚れ直して、幸せな1日だった。
名残惜しいがもう外が暗くなってきたため、シャンクスとのデートは終わりを告げた。
まだ高揚してるせいか、自室に戻るのではなく船首付近で真っ暗な海を眺めては、時々リングを確認していた。
そんななまえを背中からベックが声をかける。
「お頭とのデート感想会でも開いてやろうか?」
「ベック、やばいよ幸せすぎてとろけそうだよ」
「そのにやけヅラ見りゃ誰でも分かる」
にまにまと頬が緩んでいるなまえの隣で、船に寄りかかりながらベックは煙草に火をつけた。
デートが成功したか失敗したかなんて、先程からなまえの顔でもろわかりだが、相談相手の義務を果たすためベックは相槌を打ちながらなまえのデートの様子を聞いた。
シャンクスが今まで素直になれないのが、"なまえの好きな人はベックだ"と勘違いしている為なのはベックにはとうの昔に気付いていた。それを本人達に伝えてないのはこのままなまえを渡すのが癪だからという微かな抵抗だ。
そんなシャンクスがリングをあげたり、他の男と腕を組むなと約束を出したのにベックは心底驚き、少しの嫉妬から咥えていた煙草はみるみると短くなっていった。
「知ってるか?男がリングを渡す心理は‥ずっと一緒に居たいだったな」
「え!ほんと!‥‥いや、でもあのシャンクスがそんなの分かって渡すとは思えない」
「さあな、聞いてみるか?」
「むりむりやめて!分かってたって自意識過剰くらいさせて!幸せに浸るから!」
まさかあの男がそんなことを考えて贈り物をしたかなんて、船員の誰もが思いつかないだろう。なまえもベックからの言葉を聞いて、まさかとは思う。だが本当に本当に少しだけ希望を抱きたいというのが乙女心だ。
「女はそーゆうの好きだなァ」
「そーですよー夢くらい見させてってことよ」
「なあなまえ」、と急に真剣な顔で見つめてきたベックに、なまえはきょとんとした顔で見つめ返した。
「俺が渡したやつだろ?そのニット」
「え、うん」
「男が女に洋服をあげる意味は、脱がせたいからって知ってたか?」
へ、と腑抜けた声がでるなまえを無視して、ベックはなまえの頬をするりと撫でてから、グッと腰を引き寄せた。
そのままベックの厚い胸板へとなまえの顔が埋まり、煙草の匂いが鼻を掠める。
「ま、‥‥ベック?!」
ベックの腕で慌てているなまえは、顔はりんごのように赤く染まり、男の加虐心を掻き立てた。
このまま脱がせてしまいたい気持ちがほんの少し溢れて、なまえの背中へするりと手を侵入させる。
「や、ぁ!」
「‥‥」
ベックの冷たい指がくすぐったく、名前はか細い声をあげれば、ベックは自分を落ち着かせるために、はあ、とため息をつき、洋服に侵入させていた腕をするりと抜いた。
「‥ま、こーゆう男もいるかもしれねぇから気をつけろ」
「〜〜っ!!べ、ベックのばか!」