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瞬く間に男を倒してしまったシャンクスは、転がる男には目もくれずになまえの目の前へと足を運び、まるで存在を確かめるかのように「なまえ」、とポツリと呟いた。
痛々しく縛られているその腕を一瞥し、しゃがみ込んで縄を解いていくシャンクスに、なまえは安堵と嬉しさからまた目を潤ませた。

「悪かった、遅くなって。腕‥痛むか?」

申し訳なさそうに眉を下げるシャンクスは、縄でほんのりと赤くなった細い腕を包み込むように握った。
なまえは自分が悪いのだとぶんぶんと首を横に振る。

「私こそごめんなさい‥。ベックに気をつけろって言われてたのに、‥シャンクスが来てくれてよかった」

ありがとう、とへらりと力なくなまえの首元は洋服がはだけ、白い首筋にはぽつんと1つ赤い華が咲いていて、それを見つけたシャンクスは身体を強張らせ、眉をグッと潜めた。

「つけられたのか、」となまえの赤い首筋にシャンクスは手を添えた。
紛れもなく先程の男が洋服をずらし首元に跡を付けたのだろう、その様子さえ想像してしまい、シャンクスは嫉妬心から少しだけ怒りを露わにした。

「‥やっぱり跡ついてる?さっきつけられちゃって。でもその後はシャンクスが助けにきてくれたから未遂だよ!」

場を和ますように少しだけ明るめに伝えるも、シャンクスは「ごめんな、」と自分がもう少し早く辿り着ければ、と後悔でいっぱいである。

なまえは、先ほど男にされたキスを思い出し、嫌悪感からゴシゴシと自分の手の甲で唇を拭った。
シャンクスの薄く色付いた唇が反射的に目に付く。

「ねえ。シャンクス。私あの男にキスされたから‥上書き、してほしい、」

シャンクスの端正な瞳が大きく見開いた。

自分でも驚きである。まさかこんな大胆な事をお願いするなんて、攫われたアドレナリンのせいか、ただ欲がでたのか分からない。
告白すらしてもいない、彼女でもないのになんてお願いをしているのか。


シンと静まり帰った沈黙が怖く、嘘だよ、と誤魔化そうと口を開いたが、それより早くシャンクスが声をあげた。

「俺でいいのか」

シャンクスの覚悟を決めたようなその瞳は少しだけ熱がこもっていて、なまえをひどく興奮させた。
シャンクスの気持ちがしょうがない、なのか、どう思っているのかなまえにはわからないが今はそんな事考えている余裕なんてこれっぽっちも無い。

なまえの首筋から顎へとするりと移動するシャンクスのその慣れた手つきの太い指に、緊張から視線を下へと外した。

「シャンクスが、いい」

ぽつりと、か細い声で呟くなまえに、シャンクスはゆっくりと唇を重ねた。







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