03
「なまえ!ベックも、こんな所にいないであっちに行こうぜ」
びくりと肩が飛び跳ね、なまえは愛しい声の方へ身体を向ける。
少し前まで目線の先にいたシャンクスに誘われれば、嬉しさでなまえの心はポカポカと温まる。
嬉しさか、緊張からかすぐに声を発さないなまえをチラリとベックが目をやり、いつものように助け舟をだす。
「丁度なまえがそっちに行くところだったみたいだから連れてけ。俺は次の島についてスネイクと話すことがあるから後で行く」
じゃあな、とヒラリと片手をあげて去るベックに、気を遣い2人きりにしてくれたのは分かってはいるが、なまえは味方がいなくなる不安さから、「あ、ベック、」と少しだけ悲しそうに呟いた。
そんななまえをシャンクスは気まずそうに頬を掻いた。
「‥‥悪ィ、邪魔したか?」
「え?!全然!ほんとにシャンクスに会いに行くとこだったから!来てくれてほんとにうれしいよ!」
あらぬ誤解をしてそうなシャンクスに、これでもかと手を横にブンブンと振り、迎えに来てくれた嬉しさを吐露した。
そんななまえの嘘をついていない様子にシャンクスは白い歯を見せ「そうか!そりゃあよかった!」と無邪気に笑う。
「ベックも話終わったら後でくるみたいだから、良かったな」
「?うん、そうみたいだね」
ベックは気を遣って暫く時間を潰してくれるだろうな、となまえは申し訳なさと共にぼんやりと頭に思う。
そんな少し曖昧な返事をしたなまえが、ベックとの2人の時間を潰してしまったと自負しているシャンクスは、やっちまったか?と再びなまえに謝罪を口にした。
「ベックとの時間潰して悪かったな」
「なにそれ?ベックとは毎日話してるから‥‥」
声が小さくなっていくなまえに、言葉の続きを催促するようにシャンクスはなまえの顔を歩きながらではあるが、軽く覗き込むように確認した。
「シャンクスとの時間も…もっと、欲しい、な」
覚悟を決めたように自分より遥かに背が高いシャンクスを。ジッと透き通った目で見つめるなまえ。
シャンクスはまるで想像つかない言葉を言われ、驚いたように目を見開いた後、嬉しさと気恥ずかしさを隠すように「だっはっは!」と笑い、なまえの頭へとポンと撫でるように手を置いた。
「そりゃあ悪かった。確かになまえのわがままを最近聞いてねェなぁ」
今までの2人の思い出を遡り、ぼんやりと海を見つめるシャンクスになまえはチャンスだと言わんばかりに声をあげた。
「そうだよ!‥‥次の島でご飯おごってくれたら許してあげる」
「ああ、約束だ」
「いいの?!」と飛び跳ねるほどの喜びを見せるなまえをみてシャンクスはまた笑った。
「むしろなまえこそいいのか?俺と出かけちまって」
「すっっごくたのしみ!」
話の勢いでできた島へ一緒に行く約束に、隣にいるシャンクスに見られないように、なまえはにやけそうな口を手で隠した。