05
シャンクスと夜に会う約束をしてから嬉しさにあけくれ数時間たてば、たちまち夕飯時でがやがやと騒がしくなる。

なまえはお目当ての男をまだかまだかと探し、やっと訪れた男に声を張り上げた。

「ベック!ベック!」

ざわざわと男達の笑い声や話し声が聞こえる中、ベックは決して間違えることはないなまえの声がする方向へと首を向けた。

「はやくー!席とってあるよー!」

早くこっちへ来いと言わんばかりのなまえのおいでおいでという手の振り方はもはや毎日の恒例である。
朝ご飯は起きない船員や食べない者もいる中、夕飯はほぼ全員が食べるため、シャンクスもいる。
誘ってみろと伝えた事もあるが、それでは島での2人でのご飯の新鮮さが落ちるから、となまえはベックと食べるのがほぼ当たり前と化している。

「なまえ、はやく来てたなら先にもう食ってていいぞ」

「やだ、一緒に食べようよ」

むっ、と口を尖らすなまえはまるで子供のようで、あやすようにベックは「そうか、待っててくれてありがとうな」となまえの頭に手を当てた。

いただきます、と元気よく声に出したなまえは、ハフハフと熱さを堪えながらごろごろとした大きなジャガイモが入っているカレーを頬いっぱいに詰め込む。
暫く夕飯を堪能したあと、「今日ね、」と様々な出来事を聞くのがベックの日課である。
 

「そういえばさっき色々気遣ってくれて助けてくれてありがとね」 

感謝を伝えられたベックは、今日1日でのなまえとの会話を振り返り、昼間の甲板での出来事がふと頭をよぎった。

「?‥ああ、昼間のか」

「それでね、今日シャンクスが夜船番やってるから来ないかって誘ってくれたの!」

「そりゃあ良かったな」

心底嬉しいといった表情のなまえは、先ほどまでは止まることがなかった右手のスプーンは今は宙で止まっている。

「それじゃ今日の船番のお頭には夜食は届けなくていいって、ルウやコックに伝えといてやる」

何か見ちまったらお互い気まずいだろうしな、と眉一つ動かさずいうベックに、なまえは「ば、ばか!!」と焦ったように、何もないし、とモゴモゴと口を動かした。 

だが実際は夜中の暗さと冬島付近特有の寒さから、どうにか少しでもくっついたりできないかと下心はたっぷりとあるなまえは、バツが悪そうな顔をした。

「何もないっていう割には、なまえさっき風呂入ってたんじゃねェのか?」

「っ!!」

まんまとお見通しである自分の行動になまえは頬をじんわりと赤く染めた。
ベックのよく人を見ているところは尊敬する部分でもあるが、こーゆう時のベックは本当にやめてほしい。

「心配するな、誰も行かせねェようにするよ」

「‥‥ベックのいじわる」

まるで全てがお見通しであるベックに、なまえはもう言い訳をせず、恥ずかしさからか手を顔の前へと覆った。







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