06
びゅうびゅうと吹く夜風は、氷のように冷たく肌の温度を下げていく。
ベックにからかわれながらも、しっかりとお風呂に入り、前の島で奮発して買った良い香りのボディオイルを少量塗り、髪の毛なんかいつ触られてもいいように何十回と梳かした。
試しに、はあと息を出せばほんのりと空気が白く染まる。
寒いだろうとブランケットを一枚肩にかけ、シャンクスがいるであろう見張り台へと足を進めた。
「なまえ、来てくれたのか」
「あれ、シャンクスもブランケット持ってきたの?」
勝手な偏見だが、寒くても男達は毛布や防寒具は持ってこないイメージがあったなまえはキョトンとシャンクスが持っているものを見つめた。
「ああ。なまえにやろうとな」
なんだそれは、夜はまだまだこれからだというのに初っ端からドキドキとさせられるこの感じに焦り、なまえは「じゃあシャンクスも一緒に使お!」と、2枚のブランケットを重ねて体にかけ、シャンクスの隣へと腰掛けた。
普段甲板や島で話すのとはやはり周りの空気が違く、いつもたくさんの男の笑い声が響く中で話すのに、今はこの静かさから世界に2人しかいないのではという感覚にさえなる。
「あと何日でつくかな?次の島」
「どうだろうなー。‥あと2日くらいだと誰かが言ってた気もするな」
そっか。と相槌を打ちながらもちらりとシャンクスを見れば、月の光のせいか、いつもより色気がでているのが心臓に悪く、そして見張り台が対して大きくもないので、いつもよりも縮まっている距離になまえの身体は緊張していた。
「なんかなまえいい匂いするなァ」
入念に仕込んだボディオイルに匂いだろうか、なまえは気付いてくれた嬉しさを心の中で噛み殺し、シャンクスの筋肉質な腕に手をそっと置いた。
「もっと近くで嗅いでもいいんだよ?」
このまま抱きしめてくれ、と心の中で強く願うもそう簡単にはいかない。
「ははっ、そんな挑発すると本当に食っちまうぞ」
少しだけぎらりとしたシャンクスの瞳になまえはまたキュンと心が鳴る。
時説みるシャンクスのその瞳はまるで男を感じさせ、なまえはその瞳に弱く、じわじわと頬に熱が溜まっていくのが分かった。
「なまえ?もしかして具合悪ィか?」
「全然!?寒いけど元気だよ」
「そうかァ?暗くて分からないがいつもより顔が赤く見えるんだが」
シャンクスはそのままなまえの顔を心配そうに見つめ、自身の手をなまえの冷たくなっているおでこへと当てた。
寒い中シャンクスの手はまだじんわりと温かい。
「シャンクスの手、あったかいね」
「お前の顔は冷てェから大丈夫そうだな。じゃあなんだ、ベックじゃなくて俺に緊張でもしてんのか?」
ケラケラと馬鹿にしたように笑うシャンクスに、なまえは自分の気持ちの伝わらなさにほんの少し苛立ちを覚え、離れていくシャンクスの手をグッと握った。
「‥‥‥私。シャンクスが1番、緊張するよ?」
恥ずかしさから目を逸らしてしまいたいが、なまえは覚悟を決めてシャンクスの目をジッと見つめた。