09
「はあ〜〜おいしかったね!」
「あの店にして正解だな」
シャンクスの言葉に甘えて、沢山の料理とたくさんのお酒を飲み、幸福につつまれながら店から出る。
先程までは寒さで震えていたが、アルコールも飲んだことで少しだけ体は温まった。
「おいなまえ。まだ雪は積もってるのにさっきのようにしちゃくれねえのか?」
「さっき?」
ほら、と逞しい右腕を差し出され、なまえは想像してもなかったシャンクスの姿にパチクリと目を丸める。
だが直ぐにへらりと笑顔をみせ飛びつくようにシャンクスの腕を絡め取った。
「‥‥それ、他の女の子に頼んだりしないでよね!」
「心外だな、なまえにしかやるつもりはないが」
全く信用がないシャンクスを身長差から、下からじろりと軽く睨みつけた。
「シャンクス優しいから、腕くらいだれにでも貸しそうだもん」
「そうかァ?した事なんざ無いと思うけどな」
海賊のくせに気がいい性格は、なまえにとってはすごくすごく好きなところでもあるが、同時に他の女性からも好かれる性格のは分かりきっている。絶対に転びそうな女性は放っておかないであろう。
自分以外に腕を絡め取られるシャンクスを想像して、むっと眉を寄せる。
「じゃあなまえにしかやらないと約束するさ」
なまえの嫉妬に気付いたかのように、優しく求めてることを提案してくれるシャンクスになまえは甘えるように顔を上げた。
「ほんと?」
「ああ」と約束してくれたシャンクスに、これが果たして本当に果たされるのかどうかは定かではないが、今この場で約束をとりつけてくれたシャンクスに対して自分だけのシャンクスへの特権が出来たことにより、なまえは幸せで胸がいっぱいになった。
「転んだ女性を助けるのはいいけど、そのまま掴ませちゃだめだからね!」
「信用ねぇなァ、俺に」
けらけらと笑うシャンクスだが、こちとら本気でお願いしているのだ。
なまえ自身だって本当は雪のせいで腕を掴んでいるわけではなく、口実なのだから、同じ事を考える女性なんてこの世にたくさんいるだろう。
「だがなまえも俺以外に腕を組むのはやめてもらおうか」
「へ?」
「どんなに悪天候だとしても男はダメだ。俺と出かけるか、外出するな」
まさかシャンクスからそんな約束を提示されるとは思わず、なまえは驚いたように口をぽかんと開けた。
シャンクスに恋心を抱いてから、男性に腕を組んだことなんて一回も無いし今後もありえない。
だが、シャンクスが他の女性と腕を組まないと約束してくれるならそんな自分の約束なんて痛くも痒くもない。むしろ自分からお願いしたいレベルである。
そんななまえの気持ちから、二つ返事で了承すれば、シャンクスは満足げに笑って「約束だ、」とまるで青年に戻ったかのように嬉しそうに白い歯を見せた。