01

何も変わらない日常のはずだった。

温かい朝食を食べて、制服に袖を通してお母さんからお弁当を受け取り高校へと向かう。
そして昨夜は毎週リアタイで見ている進撃の巨人を夜な夜な大興奮で拝見したところだ。
そして今日、毎日登下校をしている友達とその感想を言い合うのが楽しくてしょうがない。


「ねえ昨日の進撃やばくない?切なすぎて」

「やばい!!兵長がさ・・ケニーになんで去ったって聞くところ苦しすぎて」

「あーあそこね!!!」

「もうさ、兵長の人生ハードモードすぎるよね」

そう、リヴァイが推しなのだ。だからこそ子供の頃のリヴァイに会いたい、そう強く思った。
唯一の家族である母親を早くに亡くし、育ての親であるケニーも黙って姿を消した。
ファーラン達と会うまでたった1人で日が当たらない地下街で生きてきたなんて、想像するだけで涙が出そうだ。

「神様お願いします、どうかケニーが去った後のリヴァイ兵長に会わせてください!」

そう強く祈って晴天の空を見上げても、なにも異変はない。
そりゃそうか、と自嘲気味に笑った。
これだと周りから見ればただの変人だろう。

「ちょっとなまえ!浮かれるのもいいけど階段気をつけてよ」

友達からのお叱りに、はーいと返事をしながら駅の階段を降りようとすれば、それはもう漫画のようにずり落ちる。

「ッ!きゃあっ・・!!」

バタバタと鈍い音と、体を打ちつけるひどい痛みが全身を駆け巡る。
その痛みから、ギュッと強く瞳をつぶった。






「いっ痛すぎ・・」とゆっくりと瞼を開けば、さっきまで暑いほどに照らしつけていた太陽の光はひやりと冷たいほど無くなっていた。

まるで夜のように薄暗く、ジメジメとした空気は驚くほどどんよりと重い。
なんとも言えない異臭に鼻がツンとした。


「・・え?待ってどこ?」

先程天に願いを叶えたからか、昨夜のアニメで見たからか、ここはまるで“地下街”の世界とそっくりなそれになまえは大きな瞳を丸くさせた。

そんなまさか、願望すぎたかと首を振ると、なまえが倒れ込んでいる階段の下には、血が滲んだ洋服に鼻血を垂らし、ふらふらと歩いている男の子が歩いている。

「リヴァッ!?、」

驚きからか想像以上に大きく出た言葉に、なまえは慌てて口を噤んだ。
ストレートの黒髪に刈り上げられたその髪型はリヴァイにしか見えなかった。

ああこれは夢なのだとなまえは思った。
あの時階段で気を失って見ている夢で、だから自分の望んでいる世界にはいれたのかと。
そう思えば痛くて悲鳴をあげている腰をあげて、なまえは急いでその子供へと声をかけた。

「あ、あの!!一緒に居たいです!」

「・・・・は?」

「じゃなくて、えと一緒に居てもいいですか?もちろんお礼はします!」

「断る」

そうぴしゃりと言い放つリヴァイはなまえを不審な人物にしか思わなかったのだろう。
この世界では珍しい子綺麗な若い女に、初対面で言われる言葉ではない。

そんなリヴァイの冷たい瞳に怯まず、なまえはスクールバックに何か入ってなかったかと急いで漁れば、今日のお昼ご飯の予定だったお弁当箱と、お菓子に、水筒。

「お腹、空いてないですか?ご飯、ちょっとなら・・」 

ぴくりと動いた体をなまえは見逃さなかった。
だが信用されていないからだろう、リヴァイは話す事はないと言わんばかりに無言で小さな背を向けた。

「待って!!本当に、行く当ても・・帰るところもなくてひとりなんです!」

「・・」

夢ならどうとでもなれ。
そして自分の夢の中だけでもリヴァイに幸せになって欲しい。いや幸せにしてやる。

「ひとりじゃ寂しいです!」

それが小さなリヴァイと初めて会った時だった。




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