02

あの日のことをリヴァイは忘れることはできないだろう。

リヴァイがフラフラと痛い体を押さえながら家へと足を進めていれば、突如バカみたいな声の大きさで一緒に居たいと叫んだその女。

初めこそは低い音を放つ自分の腹の虫を満たすために招き入れた。

食べ物があると力説した女が持つ食べ物はこの世の物とは思えないほどに美味しかった。
寝室の布団より肌触りの良い布で綺麗に包まれた箱の中には、人生で見たこともない鮮やかな食べ物達だった。

“もちろん毒なんて一切無いです!もし怖いなら、私が先に一口食べますから言ってください”

“・・・・”

“これはね、タコさんウインナーっていうんです。美味しいですよ!”

“!”

“お口に合ったようでよかったです!ごめんなさいもっと沢山持ってればよかったのに・・”

「1人は寂しい」と言っていたあの言葉が自分と重なったからか、あるいはその女の細い首はいつでもへし折れると思ったからか。

地下街では絶対に食べられないだろう料理を持って、傷1つない肌、つやつやの髪質に血色のいい頬のなまえは間違いなくこの世界では異質だった。
地上の奴が冷やかしにきたか、なにかの罠なのか・・。





そんな女が現れてから、酷く汚くて空気が腐っているこの世界では、その笑顔は太陽のように明るく、輝いて見えた。

“リヴァイくん、おいしい?”

“リヴァイくん、お茶いれるけど一緒に飲むよね?”

そうやって甲斐甲斐しく世話をする様子に、初めこそ疑っていたがそんな気持ちは馬鹿らしく感じるほどなまえという存在にリヴァイは悪意を感じられなかった。

リヴァイもまた、ほんの少しずつ警戒心をといていくその様子になまえはへらりと笑った。

「リヴァイくん、ここの傷治って良かったね」

「・・・・本当だ」

「良かった、結構傷すごかったから跡残っちゃうと思った」

なまえはツンとリヴァイの左腕にある治りかけの場所を悪戯っぽく笑いながらつついた。
リヴァイはまるで分からないといった表情でなまえを見た。

「傷なんて残ろうがどうでもいい」

「あーそんな事言って、」

「・・」

ぷい、と背を向けるリヴァイになまえは可愛いなあと心を震わせた。


リアルな夢だと初めに思ってから、それはもう怖い物なしの無双状態で好き勝手にリヴァイを弟のように世話をやいてきた。
さすがに違和感はある。お腹も空くし、眠気もくるし、痛みもある、これが夢で片付くとは到底思わなかった。

だがそんな事はなまえにとって問題ではなくどうでも良かった。
強く願っていた推しが目の前で自分と暮らせているのだから他になにも望まない。
この世界がなんなのか、何故これたのか、なにも分からないが、ただリヴァイと名乗るこの男の子が幸せになってくれればいい。

「リヴァイくん」

「・・・・」

「一緒に居てくれてありがとう」

「!」




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