「リヴァイくん、また喧嘩してきたの?」
ガチャ、と開いた扉に顔を向ければ、頬がほんのりと腫れて洋服はどろどろに汚れたリヴァイが立っていた。
きっとその行動を咎められると思ったのだろう、リヴァイはなまえから視線を逸らした。
「喧嘩じゃないご近所付き合いだ」
「そんな事言ってー」
「・・」
“ご近所付き合い”だとケニーに習ったんだろうなとなまえは思い出しながらも、パタパタとリヴァイへと近付いた。
「また痛そうな傷つくってきたね」
「・・」
少し濡らしたハンカチでリヴァイの汚れた顔を優しく拭き上げる。
ハンカチを持つ反対の手でリヴァイのつるりとした左頬に手を添えているが、リヴァイの潔癖症っていつから発覚したんだ?となまえの頭に疑問が浮かんだ。
たしかケニーと過ごしていた時はそんな様子描かれていなかったが、ファーランといる時はすでにそうだったなとぼんやりと思い出す。
拭いている場所がかすり傷で痛いのか、少し目を細めるリヴァイに、野良猫の世話をしてるみたいだとなまえは口角を上げた。
「・・せっかくの綺麗なリヴァイくんのお顔が」
「綺麗じゃねえ」
「ふふ、かっこいい顔の間違いか」
散々元の世界で見てきたリヴァイ兵長の顔ではなく、目が大きく幼い。
そんな瞳にジッと見つめられている事に気付き、なまえはリヴァイににこりと微笑んだ。
「リヴァイくんが強いのは知ってるけど、心配だからあんまり喧嘩しないでね」
「・・」
そのお願いに返答はなかった。確かにこの地下街で平和に暮らすのなんて無理なんだろうなと気を落とす。
リヴァイの強さはそれはもう嫌ってほど何度も戦いのシーンを見てきた。なまえが放っておいても死ぬ事はないだろう。だがこの幼い体から出ている血を拭っている時は、ただの男の子にしか見えない。
「洋服も洗おっか、血で汚れちゃってる」
「いい。1週間前に洗った」
「いっ?!・・だめ、洗おう」
「ッ!おい、っ!」
バンザイで脱がそうかとリヴァイの腰元の洋服を軽く引っ張れば、今まで無抵抗でいたリヴァイが、焦った様子で体を引いた。
確かに年頃の男の子を無理矢理脱がそうとするのはよろしくないのでは、と慌てて謝罪する。
「ぁっ!ごめんごめんッ」
「・・」
無言で足早にかけていくリヴァイの後ろ姿を、やってしまったと肩を落とした。
可愛い可愛いと普段思っているからか、流石に子供扱いしすぎてしまったと反省しながら、顔を手で覆った。