「エルヴィン居るんだろう。入るぞ」
数回ノックし、部屋主であるエルヴィンの返答を待たずにがちゃりと音を立てて扉を開けた。
「リヴァイか、そろそろ来る頃かと思っていたよ」
訓練の時間であるだろうリヴァイの存在を否定せず、全てお見通しであるかのように、エルヴィンは涼しい顔で机の上の書類に目を通していた。
「相変わらず全部分かりきってるって面だな」
「あれだけ兵士達が騒いでいれば誰にでもすぐに分かるさ。聞くところによると随分美人な女性だそうだな」
楽しげに微笑むエルヴィンと、何奴がなまえをそんな目で見ていたのかと心底不快そうにリヴァイは舌打ちをした。
「チッ・・まあいい話が早くて丁度いい。そういうことだ、俺の隣の空き部屋をあいつの部屋にする。文句は無ぇよな」
「ああ。もちろん覚えているよ」
地下街でリヴァイと出会い調査兵団に入れと話をもちかけた際、リヴァイから威嚇されながらも条件を言われた事は衝撃的で今でも思い出せる。
“なまえという女に関わる情報が少しでも入れば俺に報告しろ。もし見つかった時、なまえも調査兵団に入れろ。それが条件だ”
“残念だがそれは受けられない。こちらも人助けをしているわけではないからな・・立体機動も使えない、一般の女性を兵士として入れるのは無謀すぎる”
“兵士になれなんざ思ってない。あいつは酒場で働いていた。・・食堂くらい兵団にもあるだろうが”
あの頃の刺々しいリヴァイを思い出し、エルヴィンは小さく笑みを浮かべた。
「エルヴィン、お前何を笑ってやがる」
「ああ・・・。昔を思い出して少しな」
リヴァイは時間がある限りなまえの捜索に力を入れていた。
休みの日は勿論、訓練が終わった後も時間が許す限り地下街を含め、ありとあらゆる所でなまえを探し求めていた。なまえのその美貌から全く耳に入らないという事は無いと思っていたが、気味が悪いほどなまえの情報は入ってこなかった。何度自分を責めたか分からない。
「リヴァイの思い人が見つかって私も安心したよ。だが今まで・・、彼女の心は大丈夫だったか?」
「ああ・・・。さっき帰る場所を訪ねた時にひどく怯えていた。なまえの身なりからして薄汚ねぇ所に居たわけでは無さそうだが、大方貴族の豚野郎の養子か、あるいは・・・お楽しみ目当てで買われたか」
その視線だけで人を殺せるのではないだろうか。エルヴィンはそのリヴァイの執着ぶりに、ここまで想われている女性に早く会ってみたいと探究心が芽生えた。リヴァイには決して言わないが。