あのままハンジが来ていなければどうなっていたんだろうか。
ハンジが去った後2人きりの部屋が無性に気まずく感じ、夕飯を一緒に食べようとリヴァイの背中を押しながら食堂に連れてきたものの緊張からなのか食事は味がしないようだった。
「それで、お前はどうなんだ」
「ど、ど、どうって・・・」
パンを食べようと千切ろうとした手がぴたりと止まった。
視線をさまよわせ顔を赤く染め、もごもごと口籠るその様子は第三者から見ればどこから見ても好意がある反応だった。
だが地下街で何度か襲われそうになっていたなまえを知っているからこそ、リヴァイはあくまでもなまえからちゃんとした言葉がない限り手は出さないと心に決めていた。
「まあ・・・時間がかかっても構わねえ。何十年も待ってたんだ、今更俺の気持ちが変わる訳でもないしな」
リヴァイの先程の熱い瞳、好きだと伝える形の良い唇、つい目の前にいるリヴァイの口元に視線を向けてしまい、なまえはぶんぶんと頭を振った。
すると、小走りで近付いてきた兵士の1人がおそるおそるリヴァイへと話しかけた。
「あ、あの!リヴァイ兵長・・・お食事中すみません、あそこの新兵達の喧嘩を止めていただけないでしょうか・・」
心なしかげんなりとした様子のその人が指差す所には、エレンとジャンがなにやら言い争いしているらしく、その周りを野次馬がわいわいと囲んでいた。
「チッ・・・大人しく飯も食えねえのかあいつらは」
ガタリと音を立てて席を立ち、騒ぎの中心へと向かっていくリヴァイの背中を見送れば、何故かひどく寂しい感情が押し寄せた。
遠目でリヴァイがエレンとジャンを蹴り上げているその場面にくすりと笑みが溢れる。
2人を静かにさせたリヴァイはこちらへと足を進ませるが、近くにいた女性兵士からお礼を言われているのだろうか、話しているその様子になまえはずきりと心臓が握りつぶされるようだった。
「ッ・・」
早くここに帰ってきてほしい、気付かぬうちに貪欲になっていたようだ。心に薄く黒い霧がかかったような気持ちは気分のいいものではなかった。
その女性兵士と話している様子を見たくないと急いで視線を逸らしなまえは水を飲み込んだ。
そうだ、何を恐れているのだろうか。
再びリヴァイと会えた時は絶対に後悔しないようにしたいと、そう決めていたじゃないか。