「おい嬢ちゃん!こっちにも酒追加だ!」
「かしこまりました!」
先程までいたお客様の机のお皿を積み重ねて片手で持ち上げ台拭きで拭き取り、駆け足でキッチンへと戻る。
声をかけてきたお客様が飲んでるのはこのお酒だったはず、と準備してまた急いで運びに行った。
「はい、お待たせ致しました!」
「おう相変わらず早ぇな」
「もちろんです!」
渡したお酒をすぐに浴びるように飲んでいる、こちらのお客さんはどうやら地上への階段の1つを独占しているらしく金払いがいい。
初めこそは小娘だと嫌な絡まれ方をされていたが、今ではなまえの丁寧で早い接客に惹かれて通いつめている常連の1人だ。
「この地下街でバカ丁寧な言葉遣ってるのは嬢ちゃんくらいだろうな」
「そうですかね?」
日本にいた時はこれが当たり前だったし、他の酒場にいく勇気もないので普通が知らないなまえはきょとんと目を丸くさせた。
「ああ。言葉遣いに、その顔、本当は良いとこのお嬢さんだったりしねェか?」
にやりと口角をあげて話す男はいったいどんな悪い事を考えているのだろうか、ぶるりと震えそうになる気持ちを押し殺してにこりと笑った。
「あいにくですが・・父も母もこの世界に、」
「おいおいやめとけ!この嬢ちゃんはケニーのガキと一緒に暮らしてるんだぞ」
「「ッ!?」」
ガタイの良い店主の一言でわいわいと賑わっていたお店がまるでお葬式のように静まり返ったと思いきや、すぐに「マジかよッ!!」と一斉に騒ぎ出し、今日1番の騒ぎ具合に耳を塞ぎたくなるぐらいだ。
「おい、本当なのか・・・・?」
焦ったように本当かどうか問いかけられるので、これを伝えてリヴァイに迷惑がかかるのではないか、となまえは思いつつもここで否定するメリットも特に見当たらず、歯切れの悪い返答をした。
「まあ、・・・・そう、ですね」
「!」
「手出そうなんて考えた瞬間首が飛ぶだろうな」
シーン、と漫画の効果音が付いてしまいそうなその静寂の空気に、なまえは居心地悪そうに眉を下げた。
「お、おい・・あのガキと姉弟って事か・・?」
「てことはあんたもケニーの、ッ?」
きっとなまえとリヴァイがケニーの子供である事を想像してるのだろう。
ここで子供ではないと否定したらリヴァイの耳にも噂が回って入ってしまうのでは、そしてケニーの子供とした方がこの酒場で手を出されることはないのでは、と数秒の間に様々な感情が頭をめぐった。
考えた結果あまり触れるべきではないと、なまえは何も返答はせず、にこりと微笑んだ。
「「!」」
その微笑みが肯定にみえたのだろう。男達は顔を青白くさせ、あまり関わりたくないとガタガタと椅子の音を鳴らし背を向け始めた。
そうだとも、違うとも答えてないからまあ嘘をついたわけではないなとなまえは小さく安堵のため息をついた。
そんなにリヴァイが有名なのか、いやケニーが有名故にか。
きっと店主はなまえが手を出されないようにと釘を刺してくれたのだろう。