「今日は私が買ってきちゃったけど・・明日にでもリヴァイくんも一緒に買いに行こうよ」
「え?」
「リヴァイくんが気になる茶葉もあるかもしれないし・・いろんな種類があってわくわくするから!」
約束だよ、となまえはふんわりと微笑んだ。
そんななまえにリヴァイは見惚れたようにじっと見つめたあと、こくりと頷いた。
茶葉の事しか考えていなかったので、リヴァイの夕飯を買いに行くのを忘れていた事を突如思い出したなまえは、バッと体をあげた。
「あッ!?」
「?」
「ごめん、ちょっと待ってて・・ッ!」
大金を持ち歩くのも怖いので、封筒から2枚ほどお札を抜き取ったあと机へと置いた。
どうしたのかと不思議そうなリヴァイに、「すぐに帰るから!!」と言い残し急いで扉を開けて、猛ダッシュで近くの店へと目指した。
せっかく会えたリヴァイとの2人の時間なのにと、泣く泣く足を動かす。
どうも地下街では新鮮な食材はほぼ無いといってもいい、食べるものとしたらパンや芋が基本。日本食が恋しくなるが、なまえにとっては大好きなリヴァイと食べればパン一切れさえご馳走様になる。
夜も遅いがいつもお世話になっているパン屋のライトがまだついているので、安堵して足の速度を落とした。
すると、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべてこちらを見ている2人組の男が目についた。
まさに入ろうとしているお店の近くにいるものだから、なまえは嫌そうに眉を顰めた。
だが早く買って早くリヴァイの元へと帰りたい、その気持ちで足を進めた。
「ここのパン屋に通ってるって噂は本当だったって事か」
「ああ、まさかこんな早くに会えるとは感謝しねェとなあ」
通り過ぎようとしたが、グッと右腕を掴まれる。
「!」
会話もしたくないと無言で体を離してもらおうとするが、アザになってしまうくらい痛いほどに力を込められる。
「いッ・・た!」
「おい、抵抗するな。綺麗な顔を傷付けられたくねェだろ?」
「!」
怪しげに光るその男の左手に持っている包丁を、チラリと見せつけてくる様子になまえは思わず恐怖から息を呑んだ。
治安の悪さ故にいつかはくるだろうと思っていたが、いざ体験すると小さく体が震えているのがわかる。
「黙ってこっちへ来い」と力強く引っ張られ、なまえは転びそうになりながらもひどく重い足を動かした。
ああ、こんな思いをするならリヴァイに頼んで一緒に買いに行くべきだったと心の底から後悔した。