最悪だ。リヴァイとの大切な時間を奪われたのも、すぐ帰ると言っておいたのに心配かけてしまうのではないかと、なまえは掴まれた腕に勢いよく噛み付いた。
「!」
その男は痛みに慣れているのか声も出さず、ギロリと殺意の込められた視線がなまえへ降り注ぐ。
「おい、大人しくしろって言ってんだろうがッ!!」
「ッ!!」
ガンッと痛々しい衝突音が響く。
必死の抵抗も虚しく、その太い腕でこの男達の部屋だろうか、汚い壁へと突き飛ばされた。
「おいおい、丁寧に扱えよ。万が一顔に傷でもついてみろ、価値が下がるだけだ」
「その時は傷物好きな野郎に売り払えばいいだろ」
「駄目だ。コイツは地下では滅多に会えない程のお宝だぞ・・一体いくらまで出してくれるか」
「確かに、今まで誰も手出さなかったのが不思議だよなぁ」
そういって高笑いした男達の声はなまえにとっては悪魔の笑いにしか聞こえなかった。
今更だがこの世界で死んだ場合自分はどうなるのだろうか。元いた世界へ戻るのか、このまま死んでしまうのか、はたまた全てが夢だったのか。
死ぬにしてももう少しリヴァイと一緒にいたかったとなまえは俯くように下を向いた。
「どうせ初めてじゃねえし、一回くらい味わってもいいだろ」
「おい乱暴にするなよ」
「ああ分かってるさ」
興奮したように荒い息を繰り返す男はあまりにも醜く、なまえは「ひっ」と小さく声が漏れた。
覆い被さられ、汚い腕がなまえの太ももへ触れるその時だった。
トントン、と控えめに小さく扉が叩く音がした。
こんな所に訪ねてくる奴なんて誰だと、男達は顔を見合わせる。
扉の近くに立っていた男は仲間が帰ってきたのかと躊躇いもなく、キイ、と音をたてて扉を開けた瞬間だった。
「うッッ、!!ぐぁああ!!!」
「!」
その男の体の真ん中を貫いた刃物が、キラリと光ったように見えた。
刃先が引き抜かれた瞬間、おびただしい血の量が体から吹き出て、まるで真っ赤な世界のような視界がなまえの瞳をうめた。
「ッッ!ぁ・・っ、!」
「!お、おいどうなってんだっ?!」
初めて見た人が殺される瞬間に、なまえはガタガタと大きく体を震わせ、なまえの喉からは細い息しか通らなかった。
「ぁ・・・・」
大きな音を立てて、痛みにもがきながら刺された男が倒れると、逆行で顔こそ見えないが小さい子供の影がゆらりと部屋へと入った。