08.愛を持って毒を制す
きっとこの日からだろう、リヴァイへのアプローチをやめたのは。
「なまえさんってなんであんなにリヴァイ兵長の事好きなんですか?」
新兵との訓練で、休憩中のジャンに言われた一言になまえはきょとりと目を丸くした。
「え、聞きたい?まずはあのかっこいいお顔でしょ。そして冷たそうに見えて仲間想いでー」
「いや、やっぱ長そうなんでいいです」
「ちょっと、聞いたからには最後まで責任とってよ!」
ぷりぷりと怒るなまえはまるで子供のようで、ジャンは本当年上に見えねえな、と心の中で呟いた。
「でもよくめげないでいけますよね、そこは尊敬してますよ」
「そこはってなに?!これでも一応どうやって好きになってもらおうかくらい考えてるし!」
「へー、どんな?」
「・・・見つければ絶対声をかける、とか、」
きっと実際は何にも考えていなかったのだろう、誤魔化すように視線を逸らすなまえにジャンは小さく笑った。
「はっ、ガキの恋愛ですか?」
「うわーん、ジャンが虐める!!アルミンたすけて、どうすればいいの!」
「そんな・・僕に言われても、経験ないからお役に立てるかどうか・・」
なまえの近くに座って休憩していたアルミンに、嘘泣きをしながら助けを求めればアルミンは少し困ったように笑った。
それでもジャンの言う通りかもしれない。なまえの好きだという言葉はリヴァイにとっては挨拶程度に交わされている今、特に進展があるわけではない。
「でも確かに何も動かなかったらこのままかな?誰かにとられちゃうのやだし・・」
「まあ、すぐに取られるってわけでは無さそうですけど」
リヴァイが特別親しい女性がいるわけではない現状の今こそチャンスなのではないだろうか。
「もしやアピールが足りてないのかな」
「いやいや、なまえさんはアピールしすぎですよ!」
「え、逆に?!」
驚きから声を張り上げたなまえに、ジャンは思いの外真剣に考えてくれているようである。
「男っていうのは追いかけたい生き物だからあんまり押すと良くないだろ」
「確かに・・押してだめなら引いてみろって言葉もありますからね」
ジャンに続き、アルミンの言葉に説得力がぐんと増す。
「ええ?!そうだったんだ・・!?」
「まあなまえさんが兵長に話しかけるのをやめるなんて無理っすよね」
「うっ・・・」
あの四六時中リヴァイの事だけを考えているようななまえがリヴァイと距離を置くなんて考えられないと、諦めたようなジャンになまえは頬を膨らませた。
「やる!それでリヴァイ兵長が私を好きになってくれるなら、・・・しばらく我慢する!」
「しばらくって2日とかじゃないですよ?」
1日話せなかっただけで死ぬほど悲しいが、頑張るしかないなとなまえは小さな声で、「・・・・・がんばる、たぶん」と呟いた。