09.離れてみたら変わる世界
『いつも兵長の近くでご飯食べてたから絶対寂しい!ジャン一緒に食べようよお願い!』
そうお願いされたのは昨日の話。
毎日欠かさず兵長と食べていたなまえが他の人、ましてや男と食べているなんて衝撃的な話だろう。こんな好奇の目で見られるとは、とジャンは頭を抱えたくなかった。
分かりきっていたこの視線に普通ならば絶対に断りたかった所だが、どうやらなまえを思いの外気に入ってるようで、なまえの捨てられたような瞳に見つめられれば、ジャンは引き受ける選択肢しかなかった。
ため息をつきたいのをグッと堪えていると、目の前で項垂れているなまえが口を開いた。
「兵長と話したくなっちゃうからさ、なるべく距離置いたんだけど・・・つらすぎるねこれ」
「まあ、そうだよな」
「これがしばらくって拷問とおなじだよ」
「・・・俺も視線で体中穴あきそうです」
「え?!ごめん?!私と食べてるの珍しいからだよね・・・でもジャンがご飯一緒に食べてくれてよかった!!1人だったら泣いてたよ」
心底嬉しそうに喜ばれれば、ジャンはああもうどうにでもなれと、突き刺さる視線を考えないようにスープをかきこんだ。
「・・・というか明日も続けないとだけど大丈夫ですか?」
「う、うん。ちなみに明日も隣、きていい?」
「・・は?」
おねがい、と再び子犬のような瞳で見られるので、ジャンは渋々了承するしかなかった。
「まあ、・・・時間かぶれば」
「やったーっ!ジャンって意外に面倒見いいよね」
小さく両手をあげて喜びを表現するなまえに、「なまえさんが手のかかるだけです」と、もはやどっちが年上なのか分からないとぼんやりと思った。
「あのさ、こんな相談乗ってもらってるけどジャンは好きな人いないの?」
「はッ?!」
「ほらジャンの同期のミカサとか美人さんだよね」
「〜ッ!俺の話はいいんですよ!!」
ほんのりと顔を赤くして嫌がるジャンに、なまえはちぇっと口を尖らせた。
さすがにお世話になっている今嫌がることはしたくないしなと諦める。
「てか今更ですけどまさかなまえさんが本当にやるとは思わなかったです」
「確かに私も絶対寂しくなるし無理かなーと思ってたけど、ジャンが一緒にいてくれるからかな」
「・・そうですか」
「ほら、男の傷は男で埋めるっていうじゃん?」
「なまえさんの口には似合わねえ言葉」