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「お前ら、口じゃなくて手を動かせ」
横から威圧感のある低い声に、「わっ」と驚きの声が漏れる。
腕を組み、舌打ちしながら近づいてくるリヴァイの様子を見たエレンは一瞬で顔を青ざめた。
確かに話に夢中になって、1人でやっている時より確かに遅くなってしまった。
ごめんなさい、となまえはけろりと答えるが、エレンは怒られるのではと体を硬直させた。
「エレン。さっきの部屋の掃除やり直しだ、全然なってねえ。」
「はいッ!すみません行ってきます!」と、早々に去っていったエレンに懐かしい思いを感じたなまえ。
手伝ってくれたお礼伝えられなかったな、と後悔しつつエレンの背中を見送り、ちらりとリヴァイを見つめる。
「兵長、会えてうれしいです」と、笑うなまえに、リヴァイはぐっと眉を顰めた。
「・・なんで昔みてえに会いにこない」
「!」
昔というのはなまえが追っかけていた時期だろう。あの時はリヴァイを遠目でも見つければ、ぶんぶんと手を振り挨拶をしていたし、食堂で見つければ必ず近くの席を取りに行ってた。
「だってなんか・・私とリヴァイ兵長がつ、付き合ってるなんて信じれなくて。・・・・ずっと片想いの時しか覚えてないから」
「あ?」
避けていた訳では勿論ないが、あれからリヴァイを見つけても、ああかっこいいとうっとりとした後に、エレンや他の同期の人と一緒にいた。
とてもではないがリヴァイと合わせる顔がなまえには分からなかった。
「クソみてえな悩み事してんじゃねえよ」
「な!私にとったら大事ですよ!あのリヴァイ兵長を・・かれし、なんて思えないですすぐに!」
むしろなんで会いに来ないのかと、リヴァイに聞かれる日が来るとは夢にも思っていなかった。
「本当に本当なんですか?あの、わたしたちが、」
リヴァイは舌打ちを一つしたあとに、ぐっとなまえの腕を引いて口付けた。
「ッ!」
「・・」
角度を変えて何度も降ってくるキスに、なまえはぎゅっと目をつぶった。
「ん、・・っんぁ」
がっしりとリヴァイの左手はなまえの後頭部へと逃がさないというように力強く添えられる。
緊張からか、微かな抵抗でぐっとリヴァイの胸元を押そうとするもその鍛え上げられた身体はぴくりとも動かない。
「これで分かったか」
鼻がくっ付いてしまいそうなその距離で、リヴァイの鋭い瞳と視線が合う。
こんなに近くリヴァイの顔を見たことがない。
「なっ・・!」
なまえの白い肌は真っ赤に染まり、驚きから大きく瞳を開いた。
「お前は俺を信じてればいい」