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あれから付き合っていた事を思い出させようとしてくれているのか、スキンシップが格段に多くなったリヴァイになまえはとても参っていた。
するりと撫でるように口元をリヴァイの指で固定され、何度も何度もその薄い唇を押しつけられる。
「ん、っへいちょ、」
廊下にも関わらず、ぬるりと侵入してくるそれに思わずなまえの甘い声が漏れる。
「おいちゃんと口開けろ」
「やっ、人きちゃう・・っ」
だめだと首をふるりと横に揺らすなまえのその瞳は、とてもじゃないがやめてほしいと伝えているのではなく確かに熱がこもった視線でリヴァイを見つめた。
そんな視線に、リヴァイは最後までしたい欲が出てしまいそうなのを抑え大人しくなまえから離れた。
「そういえば、・・アイツが頻繁にお前に会いにきているらしいな」
「へ、?ああ、・・私のお見舞いに来てくれた人ですよね」
毎週同じ日に、きっと憲兵のお仕事をお休みの日に来てくれているのだろう。
この間のエレンとの話をした以来、なまえも早く会いたいと思っていた。もし私が手を出すようなことをして二股してしまっていたら、と考えて謝りたいと何度も頭を抱えた。
「なぜか私が入口に向かうと既に帰ってるんですよね」
「・・そうか」
「一回でいいから会いたいんですけど・・」
「あ?」
急に低くなったリヴァイの声に、なまえは驚きながら視線を合わせた。
自分の発言になにかと頭を回せば、確かに他の男と会いたいなんて語弊があったのかもしれないと冷や汗をかいた。
「ち、ちがいますよ!その人に会いたいっていうより、あの・・その男の人に謝りたくて」
「その必要はない」
「だって私、その人のこと傷付けて・・」
「俺が病室で話してある。お前とアイツの関係はもう終わったんだ」
そういいながらなまえを見るリヴァイの視線はあまりにも冷たかった。
まるで悪い事を指摘されてるかのように「でも、」となまえは視線を逸らした。
「でもじゃねぇ。アイツとは絶対に会うな」
「そんな、っ!謝る一瞬だけでもだめですか・・?」
お願いします、と眉をさげるなまえにリヴァイはより一層顔を顰めた。
リヴァイにとってはなまえがその男を好きだったと思っているからこそ、男と会うのは何よりも許せなかった。向こうがなまえを忘れない限りまた恋心が芽生えてしまうかもしれない。
そして何より思い出してしまうかもしれない、リヴァイにとって記憶は無くていいものだった。
「駄目だ。これは命令だ」