12
「なまえ。どこへ行く」
びくりと体が反応し、思わず足が重い石のように固まった。
リヴァイに会うなと命令されたにも関わらず、なまえはあの男と会うのを諦めきれなかった。
どうしても一度ちゃんと謝りたい。そしてこのモヤモヤを終わらせたい。
過去の自分がなぜリヴァイ意外の男と関係を持ったのかは分からないが、今の自分にはリヴァイしかいないのだと、今後はもう・・会いに来ないで欲しいと。
今日もあの人が来る予定の日だと、自分から門の外へ待っていようとそろりそろりと抜けたものの。
「ぁっ、兵長。・・えへ。おはようございます」
「どこへ行くと聞いているんだ」
「それがその・・外に、いえ、街にでようかと思ったとこです」
「・・」
ああ信じてもらえてないのだろう、それもそうだ。あの人が頻繁に来ているのを知っているリヴァイも、今日が来る日だと分かっているのだから。
「ほ、ほんとですよ。兵長も行きますか?」
「そうだな、俺も行く」
「えっ?!」
まさか着いていくという選択肢になるとは思わなかったなまえはつい驚きの声を上げてしまった。
これではまたあの人に会えない。いや、リヴァイとの時間が増えるのは嬉しいのだが、喜びきれない自分もいる。
「なんだ不満なのか?」
腕を組み文句があるのかと言いたげなその態度に、なまえは何も言えず口ごもった。
「いや!まさか、とっても・・うれしいです
・!」
えへ、と渇いた笑いをこぼせばリヴァイの冷たい瞳とじろりと視線が合う。
「てっきり街じゃなくて男に会いにいくもんだと思ってたがな」
は、と鼻で笑うリヴァイにぴたりと体を強張らせた。
ああ、嘘がばれているのに嘘を続けるとこんなに冷や汗をかくのかとなまえは心臓をつかまれた気分だった。
「兵長。心配をかけないように兵長も一緒に着いてきてくれれば・・会ってもいいですか?」
「だめだ、お前が会う必要はない」
まるで考える素振りすら見せないリヴァイにむっと口を尖らせた。
「分からずやです」
「あいにく元からだ」
口を開けばリヴァイの悪口を言いかねないからか、なまえの顎をぐっと引っ張り触れるだけの軽いキスを落とした。
「んっ、」
「・・」
「・・ご機嫌取りのキスですね?」
「こんなんで機嫌が直るなら何回でもしてやる」
そういって後頭部を押さえ込み逃がさないように、また唇を重ねるリヴァイになまえはずるいと心の中で思った。
こんなにお願いしているのにと拗ねたくなる気持ちもあるが、大好きでたまらないリヴァイに言われれば悪い気すらしない。