14
「なまえ」
「!リヴァイ兵長!」
愛しの姿にぐっと抱きつきたい衝動を抑え、にこりと笑った。
「ハンジとの話は終わったか」と聞いたリヴァイに同意して頷けば、今度はリヴァイの手伝いをして欲しいというお願いだった。
勿論断る理由なんて一切ない。
だが今日の夜に憲兵の彼と会う、それがほんの少しリヴァイに対して罪悪感があった。
あんなに行くなと止められているのにそれを破るのだから。
ちらりと隣で歩いているリヴァイを盗み見れば、スッと通った鼻筋に綺麗な瞳。
「リヴァイ兵長、‥大好きです」
ぽつりと呟いたそれは間違いなくなまえの溢れた気持ちだった。
黙っては行くけど、決して浮ついた気持ちで会うわけではない。まずは彼に心の底から謝ろう、そして会いにきてくれたのに会えなくてごめんなさいと、これはやましくないんだと心の中で言い聞かせた。
「・・」
「周りに誰もいないとキスしてくれるのに、今はしないんですか?」
甘えるようなそのなまえの柔らかい瞳に、リヴァイは心臓を掴まれた気分だった。
なまえからの好意を感じる事は多々あるが、素直な気持ちを真っ直ぐ言葉に伝えるのは珍しい。
リヴァイはなまえの前髪をかきあげ、その丸いおでこへと口付けた。
「お前、何かあったか?」
「な、にもないですよやだなあ」
いつものへらりとしたその笑顔のままなまえは自分の髪の毛をくるりと触った。
「・・」
なまえは嘘をつく時自分の髪の毛を触る癖がある。
スッと目を細めたリヴァイに前を向いているなまえが気付くはずもなかった。
「ところでおでこだけですか?」
「ああ」
ちぇっと口を尖らすなまえにリヴァイは嘘は見えないが、なまえに対して微かな違和感を感じたのは確かだった。
「あ、そうだ兵長!今日お部屋行くのいつもより遅くてもいいですか?」
いつも2人が休みの前日はリヴァイの部屋に泊まりに行くのはもはや慣れた恒例のことだった。
最初こそ足を踏み入れるだけでも緊張したあの時を今でも鮮明に思い出せる。
「・・なんの用事だ」
「えと、エレン・・とかミカサ達とちょっと話したい事があって」
そういって視線を逸らしながらさらりと流れる髪の毛を耳にかけるなまえに、リヴァイは「そうか」と呟いた。