02

ぼんやりと薄暗い中、ぎしりと音を立てながらリヴァイは渇いた喉を潤そうと食堂へと向かった。

リヴァイの足音が小さいのか、はたまた会話に熱中しているのか、こちらの音を気にしていない男女の話し声が聞こえた。

「・・チッ」

こんな夜中にまだ人がいるのかと、自然に出た舌打ちだった。
食堂に近くなるにつれ、聞き慣れた2つの声にリヴァイはぴたりと動きを止め、会話が聞こえるよう耳へと集中させた。



「おい、なまえ昼間の話本当なのかよ。兵長に言ってあるのか?」

「昼間って・・彼氏できたってやつ?」

「ああ。しかも相手は憲兵だろ・・お前憲兵に仲良い奴なんていたか?」

「ふふ、エレン心配してくれてるの?ありがと大丈夫だよ。普通にすれ違って声かけられて、まあかっこいいし試しに付き合ってもいいかなみたいな」

「はあ?試しにってなんの試しだよ」

「えー・・まあ、うん、」

なまえ自身本当にこれでいいのかと考える事が増えた。
今まではリヴァイ兵長一筋だったが、人類最強だと世間に讃えられ雲の上のような存在をずっと追いかけてるより、身の丈にあった恋愛をして結婚した方が幸せなのではないかと。


遡ること3日前、調査兵団でのお食事会でこれまでの兵長への想いがぷつりと切れた気がした。

いつも通り、しっかりとリヴァイの隣の席を陣取っていたなまえは、すぐそばにある見かけによらずゴツゴツと骨ばったその手のひらに、そっと手を重ねた。
普段アプローチしているからと言って付き合ってもいない、ましてや潔癖症のリヴァイになまえは自分から触れる事は一切した事がなかった。

『・・!おい、』

そんななまえからの初めて触れられたその手に、リヴァイは振り払いもせずただただ驚きから瞳を開いた。

『リヴァイ兵長、わたしのことちゃんと見てほしいです』

その時は抑え切れないほど大きくなった恋心による、好きな人へ触れたいという気持ちがアルコールにより溢れてしまった。
もはやどうにでもなれと思っていた。
ぐっ、と体ごとリヴァイに寄せ、遠くから見ればまるでリヴァイの左腕に絡めているように思われるだろう。

今までで1番といっていいほどの距離に、ばくばくと心臓が早まったのがわかった。
そんな緊張しているなまえを、リヴァイは一瞥し眉一つ動かず『そうか』と呟いた。





経験値が違うのだろう。
リヴァイ兵長からしたら手のひらを重ねるだけで心臓が早まるなまえは、小娘にしか思われていないのだ、そう感じた。

この悔しさを同期に話せば、ボディタッチ作戦は失敗しただなんだと冷やかされ、悔しさすら感じた。

そう、今回の彼氏の件はもう少し色々な男性と経験を積んでからリヴァイ兵長にアタックしようと考えた結果だった。









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