04
「別れろ」
「・・へ」
「聞こえなかったか?別れろっていってんだ」
それは期待していいってこと?と聞いてしまいたい気持ちもあるが、また以前のように脈がないと傷付くのはごめんだ。
やめてほしい。好きな人相手だと、人間は自分が都合のいいほうにもっていってしまうのだからそうやって期待してしまうような発言は。
「な、なんでそこまでいうんですか・・?」
「・・」
なまえに何か伝えるようにリヴァイは薄く口を開いたが、その薄い唇からはなにも発せられなかった。
「なんでなにも言ってくれないんですか?」
口を閉じ眉を顰めてるリヴァイにもどかしさすら感じた。
緊張からか、震えそうになる腕を隠すように左手で右腕の先をぎゅっと掴んだ。
「お前が、」
「・・」
「・・・・お前が恋愛するのは勝手だが。訓練と両立できるような器用な奴じゃねえ、別れろ」
「なっ!」
「どうせすぐ別れるような男といる時間があるなら、死なねぇように筋トレでもしやがれ。浮ついた気持ちで壁外にいっても死ぬだけだ」
他の男に行くな、そう伝えて貰えるのを1ミリでも期待したい自分が悔しかった。
潤む瞳を気にせず、きっとリヴァイを睨んでもなにも変わらない。
眉を顰めて、心底不快だと顔から伝わってくる。その顔が嫉妬からでてくる表情なら今すぐにでも抱きつきたかった。だが現実は「お前は弱い」と恋してる暇はないと怒ってるただの上司だった。
きっとリヴァイが嫉妬するなんて一生こないんだ、と心の中で自分を嘲笑った。
むしろ脈が無いなら期待させるのは酷くないか。
「確かに彼氏はできました。ですが彼は調査兵団ではありません、訓練で支障が出ることは無いです。むしろ壁外調査で・・彼に再び会うために頑張りますのでご心配なく」
大きくくりくりとしたなまえの瞳はいつもより細く、まるで野良猫のようにリヴァイを威嚇する。
そんななまえをリヴァイは鼻で笑った。
「お前の頭は花畑か?迷惑だと言ってる」
「なにが迷惑なんですか?支障は出ないって言ってるじゃないですか・・」
初めてリヴァイに反発したなまえは、うるうると瞳いっぱいに涙を溜めた。
「もういいです。リヴァイ兵長なんて、嫌いです・・っ!!」
「ああそうか」
眉一つ動かさず傷付いた素振りすらないリヴァイに、なまえはぽろりと一粒涙が溢れた。
「〜ッだいきらいです!!」とまるで捨て台詞のように吐き捨て、ドタドタと大きな足音をたてなまえは部屋を飛び出した。
そんななまえにリヴァイは大きく舌打ちをし、去っていく背中から目を逸らせた。