07
「えぇー!そうなんですかぁ〜?シャンクスさんのお話おもしろーい!」
「はは、面白いのは俺じゃなくて周りのやつらさ」
楽しそうに会話する男女の会話をこっそりと聞き耳してしまう私はほんとに良くない。
ヤソップが狙ってるみたいだぞ、なんて伝えてくるものだから余計気にしてしまう。沸々と怒りすら湧いてくるものだから、必然と飲むペースも上がっていった。
今まではお頭に抱きつく傘下の海賊の人や、酒場の女性と話している様子だなんて飽きるほど見ていたし、またやってるなあなんて高みの見物をしていたのに。むしろその時の方が幸せだったのではないか?こんな爆モテ男と付き合うのは私には向いていない。
そんな嫌な気持ちを、ごきゅりと喉を鳴らしてビールを飲み干した。
「可愛い顔されているのにいい飲みっぷりですね」
とカウンターでグラスを洗っている青年に、軽いナンパのようなセリフを放たれれば苦笑いがでてしまうが、「赤髪のシャンクスの女なんですよね?」と続けて声を掛けられる。
「いや、まあ‥今は、そうですね」
「気にしない方がいいですよ。あいつ強い男には片っ端に声かけてるようなやつなんで」
いやいや、相手が強い人なら誰でもいいと思っていたとしても、こちらからしたら楽しそうに話しているだけで嫉妬してしまうのだから、なんて伝えられるわけもなく「‥そうですか」と呟いた。
「まあ気にするなっていっても好きな相手にはむりですよね」
そう気を遣ってくれる優しい言葉に、何故だかとても心が温かくなった。そうだ、うちの海賊団にはこうやって恋愛相談を親身に乗ってくれる人がいない。
「〜ッ!聞いてください!」
と、調子に乗って今の思っている気持ちを一つこぼせば、アルコールのせいかぽろぽろと言葉が溢れていくようで、そんな私へ「大変なことになってるんすね」と慰めの言葉が体に染みる。
そんな私のしょうもない愚痴も真剣に乗ってくれるその青年に、無性に何かお礼がしたくて、でも何もあげられるものはなく、この気持ちを少しでもつたえようと、握手をお願いした。
シャンクスよりも細くてすらっとしたその手をギュッと掴み、「聞いてくれてありがとう」と伝える。すると、
「もし捨てられたら僕が貰ってあげますよ」
意地悪そうに笑ったその顔に、シャンクスほどの破壊力ではないが、少しだけ自分の頬が染まったのが分かる。そんなお茶目な青年に気を取られていれば、シャンクスが近付いてくるのは気づかなかった。
「おい」
と、シャンクスの酷く低い声にびくりと体を揺らせた。