08
シャンクスのジッと射抜くような視線を感じ、慌てて手を離した。全然やましい感情もないが、まるで浮気がばれたかのように冷や汗が流れそうな気分だ。
「悪いがそいつは俺の女なんだ」
まるで男を警戒するようなその言葉に、こんなよくない状況にも関わらず嬉しい気持ちもでてきてしまう。
青年はさすが酒場で働き海賊慣れしているせいか、「‥失礼しました」と人当たりのいい笑顔で奥へと下がっていった。
シャンクスと2人取り残されれば、先程相談してたこともあり勝手に気まずくなってしまい、見つめてくるシャンクスをふいと視線を逸らした。
「なまえ、男に気安く触るのはよくないな」
「・・」
さっきまで女の子と楽しそうに話してたくせに、と変な対抗心で返答ができなかった。
「なまえ」
「・・」
口を開かずに拗ねている私に、シャンクスはガシガシと頭を無造作に掻き、「ちょっと話せるか?」と私の腕を引っ張った。
突然の事に足がもつれそうになるも、その太い腕に捕まっているのだから拒否権などないも同然。
がやがやと盛り上がる酒場を出て、海沿いの道路を歩いていれば捕まれていた腕を離され、そのままするりと恋人繋ぎへと変わる。
「悪かった・・男と話すなって訳じゃない。ただ触れてるのを見て俺が勝手に嫉妬しちまったんだ」
私が男と話しているのを邪魔されたから怒っていると思っているような口ぶりに、慌てて声を張り上げた。
「!ちがう、っ!握っちゃたのは・・ごめんなさい。でも私が嫌だったのは・・」
「ああ」
「あのウェイトレスの女の子、・・絶対狙ってた」
「ん?・・俺をか?」
「っそうだよ!ばればれだったじゃん!」
思ってるより嫉妬してしまっていた私の気持ちが、ぽろりと一言吐き出してしまえばどろどろと溢れてくるようだった。
「俺よりベックの方に行ってた気がするが」
「そんなことない、!」
別れようと思っているくせに一丁前に嫉妬して、シャンクスを困らせてばかじゃないかと思うのに、先程の光景を思い出せばどうしてもモヤモヤと心は曇ってしまう。
「はは、そーかそーか。なまえも俺に嫉妬してくれたのか、気付いてやれなくてごめんな」
ぽんぽん、とあやすように頭を撫でられれば、好きだと張り裂けそうな心のせいで、このまま抱きついてしまいたい気持ちを押し殺すように下唇を噛んだ。
「・・なあなまえ、1つ聞いていいか」
急に真剣な顔になったシャンクスに何を言われるのか、決して良い言葉じゃ無いようなその言葉に、ドクリと心臓がなった気がした。