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「それで、どっちから言ったんだよ?」
エレンの取り巻きの1人であるライナーは、頬をあげ楽しそうに質問した。
「何をだよ?」
「何がって...。告白だよ!好きだってどっちから言ったんだ、やっぱりエレンか?...ずっと好きだったもんなあお前は」
「告白.....?...したっけか、俺」そう曖昧に答えたエレンに、本日2度目の驚きが部屋に響いた。
質問したライナーも目を丸く、大きく見開いて止まっている。
「なんだよ、そんな驚くことか?」
「いや...、いやいやお前、それなのになまえにキスしたのか...それは男としてやっちゃダメだ。まさか最後までなんて手出してねェだろうな...」
「...してねェよ」
アルミンに邪魔されてな、とエレンは心に思った。ほかのみんなの焦りのような表情に、さすがにエレンもおかしいと思い首をかしげる。
「なにがダメなんだよ?」
「お前なあ、エレン。お前がなまえのこと好きでも、なまえはお前のことどう思ってるのか分からんだろ。.....なまえに好きだって1度でも言われたか?」
エレンは少し考える素振りをした後に、ぼんやりと声に出した。
「.......ないかもしれねェ」
エレンの返答にライナーは額に手を当て溜息をついた。
「ダメだ。いいかエレン。ちゃんと伝えて、なまえの気持ちも聞くんだ」
「...そういうもんなのか」
ライナーに真剣に言われれば、説得力はあり、エレンも大人しく頷いた。
「そうだ、そういうもんだ」
得意気に答えたライナーの内心は、好奇心でいっぱいだった。元々この隔離された訓練兵の中でエレンのなまえに対する見え見えの好意は注目の的だった。そんなエレンに進展があったなんて、喜ぶべきだろうが、それよりもライナーは楽しくなっていた。
他のみんなも気持ちはさほど変わらず、ライナーとエレンの会話を密かに聞いているものもいる。
「なあライナー、告白っていつすればいいんだ」
「そりゃおめぇ、」と続くライナーの言葉を真剣に聞くエレンは、ライナーにどうかしてやりたい、と思わせるものだった。
どうもエレンの直球さは、応援してやりたくなるものである。
ライナーに加え近くにいた人も各々にアドバイスをした。それが全てためになったとは言い難いが。
今日の男部屋はいつもより何倍も盛り上がるものだった。
消灯時間もすぎ、暗闇と誰か分からないいびきが響くなか、エレンは1人起きていた。
ふと先日の物置小屋でのなまえを思い出した。薄暗くぼんやりとしたなかでも分かる、なまえの赤く染った頬に潤んだ瞳。心臓の音が聞こえるほど近くにいた時を。
途端にエレンはなまえに会いてえな、と消えるような声で呟いた。