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美味しい。そう遠くで誰かが言ったのが聞こえれば、自然に口角は上がる。
ぱくりと1口大きく頬張れば、ジャガイモは柔らかく口の中で崩れ、少しドロドロした香辛料が控えめなルーは白米との相性がバツグンだった。
美味しい、と心の中で自分を鼓舞すれば、マルコもそう感じてくれていたらしく、にこりと笑って褒めてくれる。
「すごく美味しいよ!なまえは今日の当番だったよね?」
「うん!そうなの!一生懸命ジャガイモむいた甲斐があったよ」
「なまえはいいお嫁さんになるね」
マルコに言われたのが嬉しくて、つい胸をはるように言えば、ジャンが少し笑っておちょくるように口を開いた。
「ジャガイモむいただけかよ?」
「...そんなことないよ?あと...愛情入れもしといた。だからこんなに美味しいのかも」
「はいはい、そうかよ。それはありがとな」
「ちょっと。もうちょっと褒めてくれてもいいじゃん」
そうなまえは口を尖らすも、ジャンはこちらを見ないまま適当に相槌をうった。
そんなジャンに仕返ししようと、じろりと睨んだあと、マルコににこりと話しかけた。
「マルコは優しいからすぐ結婚できそうだね」
「そうかな?ありがとう」
照れたように頬をかきながらお礼を伝えるマルコは絶対に優しい夫になるなと誰もが想像できるのではないだろうか。
「それに比べてジャンボはね‥こんな口の悪い人貰ってくれる女の子いるの?」
「うるせーいるんだよ。お前こそそんなドジな奴貰う男はいねえだろ」
はっと鼻で笑いながら言い返してくるジャンに、べーっと舌を出して威嚇する。
「2人が結婚すればいいんじゃないかな?」と微笑みながらマルコが伝えた。
するとなまえもジャンも、眉を顰めて「ありえない」とまた軽い言い合いが始まる様子に、合うと思うんだけどなあ、とマルコは楽しそうにカレーを口に運んだ。
今日の座学のこと、明日の登山訓練のこと、話は尽きない。
一段と強い風が吹いたようで、食堂の壁がギシリと音を鳴らす。
肌寒くなった気温に、なまえは明日の予定を思い出した。
「明日登山訓練あるのに雨降りそうでこわいね、」
「あー」
どうも雲行きが怪しく、どんよりとした暗い雲がかかっていたのを思い出す。このまま夜中に降ってしまえばいいが、明日雨になってしまったら最悪である。
ただでさえつらい登山なのに、雨が降れば視界も足の踏み場も悪くなる。
「たしかに雨が降っちまえば、バカみたいなドジでなまえが遭難しちまう確率が上がるな」
「うっ、」
「せいぜい死なないようにしとけよ」
「それに関しては返す言葉もないです」
「最初から諦めんな」
はあ、と大きくため息つきで言われればジャンの言葉が胸につき刺さる。