2

私を助けてくれたのはエイムくんとぽっぽだった。サンタの格好をしていたのはエイムくんで、KNRメンバーにクリスマスプレゼントを配っている途中だったそうだ(と言っても私がトップバッターだったらしいが)。そういえばもうすぐクリスマスか、と落ち着いた今ではそんな悠長なことも考えられる。

「名前さん、大丈夫……?」

下着姿だった私に自分の着ていた上着を着せてくれたぽっぽは心配そうに顔を覗き込んでくる。エイムくんは先ほどの男を110番で呼んだ警察に渡し、事情を私の代わりに説明してくれてる。まさか自分がこんなことになるなんて思っていなかったため、正直驚いている。

「う、ん、大丈夫……」

「ありがとう」という声が震えていて自分でも笑える。ぽっぽは私の言っていることを否定はしないが、納得はしていないと言った表情でそれもそうだろうと自分でも思う。クリスマスプレゼント届けに来てくれただけなのに、こんな事件に巻き込んでしまって非常に申し訳ない。

「ごめん、もう大丈夫。さっさと服着てエイムくんと代わってくるね」
「え、名前さん!」

彼が貸してくれた上着を返して脱いだばかりのバイト先の制服を着る。洋服箪笥の中の服は……生理的に着たくなかった。
静止するぽっぽを振り払って玄関先に出る。未だに警察に説明してくれているエイムくんに「ありがとう」と伝えると「大丈夫?」とぽっぽと同じことを聞かれて思わず笑ってしまった。ぼぶきなは仲良しだなぁ。

「うん、大丈夫。二人とも用事あるんでしょ?もう一人で大丈夫だよ」
「一人は危険です。犯人は捕まえたとはいえ、この部屋で過ごすのは精神的にもキツイでしょう」

エイムくんに説明したつもりが横から警察の方に正論をぶつけられてしまう。私だって今日1日ここで過ごせと言われても嫌だ。とは言っても彼らを縛ることもできない。どうしようと思っていると、エイムくんはいつものように優しく笑ってくれる。

「じじょうちょうしゅ?が終わったら一緒にサンタしに行こ」
「…………」

事情聴取がちょっと怪しかったけれど、申し出自体はすごい嬉しい。警官の方をチラリと確認すれば、「本日はもう遅いので後日署までお越しください」と言われる。

「ほら、警察の人もこう言ってるし、名前さんも一緒にいこ」
「……うん」

年下に気を使われて情けないな、と思いながらも私は頷く。部屋の中からぽっぽもやってきて、エイムくんは彼に「名前さんも一緒にサンタすることになった」と楽しそうに伝えている。ぽっぽには一瞬心配そうな目で見られたが、私が頷けばやっと少しだけ目元を緩めてくれた。



乾燥機に入れっぱなしだった冬服に袖を通してから、洋服箪笥の服を全部洗濯機に入れる。みんなから送ってもらったグッズTシャツだってあるのだから、やっぱり大切に着たい。洋服箪笥の中から変な匂いがしたけれど、それに関してはもう何も考えないことにした。エイムくんもぽっぽもすっごい顔してたけど……。ゴミ箱もなぜか大量にティッシュがあったし…。ティッシュに関してはエイムくんが無表情に捨ててくれた。

エイムくんたちが私へのプレゼントとして持ってきてくれたのは可愛らしいロングカーディガンで、バイト先にも着て行きやすいようなものを選んでくれたらしい。確かに私はあまり華美な服は好まないし、好みを把握されていて驚いた。それと今回のKNRクリスマスプレゼント企画は動画にするようで、私の部屋に入ってきた瞬間もバッチリ録画されており、犯行の現場を捉えた決定的な証拠としてデータを警察に渡していた。その代わり私が出ている部分を動画で使用することはできず、便宜上はバイトで忙しく家にいなかったということになった。そのため今後同行する先でもカメラに映ることはできない。動画だから編集できるとしても、あまり手間はかけたくないし大人しくしていよう。

「次はハルくん家だよ」

運転手さんに許可をもらい、エイムくんが呼んでくれたタクシーの助手席に座る。彼ら曰く次はハルの家らしい。彼に私がいる理由を聞かれたら少し面倒臭いことになりそうだなと思いながらも、私は極力声を出さないように窓の外を眺めた。