ごっこ遊び




快感にだらしなく歪んだ顔に焦点のあっていない視線。無我夢中で腰を振る一松の動きに合わせて、彼女の体も波打つ。訳も分からないのか、なまえの胸に顔を押し当てながら一松はフーフーと余裕のない息遣いで体を震わせていた。

一松が痛々しいほどに自分の唇を噛むものだから、なまえはその乱暴に扱われた彼の唇をなぞる。湿った感触が一松の血液によるものなのか、唾液によるものなのか視界の悪い今は知ることができなかった。無論、確かめる方法はいくらでもあったがその余裕は彼女にもなかったのだ。

しかし、どうやらなまえの指を気に入ったらしい一松は彼女の指を咥えると、容赦無く犬歯を食い込ませる。ウィンナーの皮のように容易く彼女の指の皮は割かれた。なまえは突然の痛みに手を引っ込めようとするが、しっかりと手首を掴まれていて逃げることは出来ない。

口の中でグミを弄ぶように咀嚼しては舐めるを繰り返す一松は恍惚とした表情をしていた。いよいよ、痛みと快感の境目がわからなくなってくる頃に、傷だらけで唾液まみれの手は解放される。

解放されたボロボロの手を片方の手で覆い、非難するように彼女は一松を見上げたがもう味わい尽くした手に興味を無くした彼は、責めるような視線も見えていないのかまだ血液の味がする唇で、非難の言葉も塞いだ。唾液も血液もありとあらゆる体液で塗りたくられた彼女の唇は、シロップ漬けの果物と殆ど同じ印象を与えた。

痛みも快感も血の苦味も生臭い甘みも全てはそこにあって、肥大化した支配欲は満たされ内臓全てに痺れが走るようだと一松は思った。何を考えていても止まらない腰の動きはそのままに、この行為が一体何なのかわからなくなる。

血は流れ、焦点は合わなくなる、体は酷く熱く、手足は痺れ、頭は真っ白だ。まるで死んで行くようではないか。最終的に排出される精液は目的に到着地には決して到着できず、無様なピンクのゴムの中で死んで行くのだ。

一松はなまえの首に手をかけ首筋の血管を抑えるようにじわじわと力を込めた。もうすぐで果てそう、そんな時彼はいつだって彼女の首をしめた。

彼女も同じように彼の白い首に手をかけると、細くて繊細な指先に力を入れた。彼女の手入れされた綺麗な手は、そんなためにあるわけではないのに、彼は毎回飽きずに同じ事を思い、死に近づく瞬間を楽しんだ。

「ね、ね、一緒に、死のう一緒、に」
「いいよ、死のう、一緒に」

そして彼らは、何度だって二人で自ら命を絶つ真似事をしていた。



他愛もなく、心中



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