照れられると困る


私はこう見えてバリバリの近接戦闘派である。

そも、露出を増やしたコスチュームを依頼した理由も私の個性には都合がよかったからだ。
私の個性はエネルギー操作。
体内に溜めたエネルギーを凝縮しパワーをつけて攻撃したり移動できたりする。
攻守ともに使えたり跳躍もできたりと単純な分凡庸性がある。
だが私の強みはこっちだと思っている。
それは、このエネルギーは他人から吸い取ったり与えたりという操作も可能にするのだ。
なので戦闘中に触れられれば相手のエネルギーを吸いうまくいけば動けなくすることも可能だ。
でもエネルギーの操作範囲は自分の体なら任意でできるが他人から吸い取ったり与えたりする場合は皮膚接触の必要がある。
その為触れやすい手のひらは勿論のことで自然と肌の露出が多い方が有利なのだ。
更にいえば接触がキーになるのでその辺りも他の人より気にならない。

なので私自身この個性で強くなろうと、ヒーローになろうと考えたその時から決めていた事なので特に異議はないのだけれど。


「あの、なんか逆にごめんね…」
「いや、俺が悪かった…!男らしくねぇ!」

目の前で唇を噛む切島君をなんとか宥めようとつらつらと頭の中で言い訳を並べるが口から出たのは当たり障りのない言葉だけだった。

「なんていうか、本当に気にしないから、気にしないで。ていうかこんなやり方でしか出来なくてごめんね…」
「…うっ、いや、与田は悪くねえよ!」
「そうだぜ!!切島となんかやめてオイラと訓練しようぜぇええ!!」
「うわっ」

項垂れていた切島君がやっと顔を上げてくれたかと思ったらどこからか急に現れた峰田君がすごい勢いで私の太ももにしがみついてきた。
なんかハアハアしていて息がかかるのが若干気持ち悪い…

「あの…」
「おい!峰田、離れろバカ!」
「うるせー!!切島だけ与田の太ももに挟まれてあげくおっぱいにダイブなんてズルすぎるだろぉ!!」
「ンなっ!!」

峰田君の遠慮のない言葉に切島君の顔が髪色と同じくらい真っ赤に染まった。やっと落ち着いてくれたのに峰田君のお陰で振り出しに戻ってしまった。
むしろ悪化の一途を辿っている。私も流石に彼の明け透けな物言いに頬が熱くなる。

「与田、峰田から奪え」

私をそっちのけに尚も白熱した言い合いをする2人を放置してガッチリと離れない峰田君をどうしようかと悩んでいると背後から声をかけられた。
首だけで振り向くといつものポーカーフェイスだけどなんとなく呆れた様子の障子君が立っていた。
奪え…神妙に頷いて私は個性を使った。

「絶対離さないからなぁ!!?ぅええ…」

魂の叫びの様なものが力なく収束しパタリと足から離れ地に伏した峰田君。

「あの、なんか…障子君もごめんなさい」
「…すまねぇ」

「いや、こちらこそ峰田から目を離した、すまん。連れて行く」


白目を剥いた峰田君を障子君が軽々と運んでいった。

取り残された私達は急に訪れた静寂の中、広い訓練所内のあちこちで響く戦闘音を聞きやっと訓練に戻ることになった。