独歩と糸

リビングで寝転がってぼけっとテレビを観ていた。ワイドショーだったと思う。『思う』、そのレベルで頭には全然内容など入っていなかった。
ふと小指に赤い糸が結ばれているのに気づく。
なんだ、これは?と思いつつセオリー通りに行けば運命の相手に繋がっているのだろう。と。その糸の先を追うことにした。
「ちょっと外出てくる」
「あれ、珍しいね 休日に外出に行くなんて」
コンビニ?と首を傾げる彼女に そんなとこ。と言い外へ出た。今日の夕食は和食なのだろうか、出汁の香りがした。
駅に行き、自然公園、下り坂、シブヤに、ヨコハマとの境界線まで行って。結構な距離を歩いた。
川沿いを歩いていると空腹を感じて、そう言えば彼女が食事を作っていたことを思い出す。ふとスマホを見ると醤油を買ってきてとのラインが飛んできていた。・・・1時間も前だな。気づかなかった。
しまったな、と思いラインを返信しようとすると 「あれ?独歩」と聞き慣れた声が降ってきたので顔を上げると醤油を抱えた彼女で。
「すまん、今ラインに気づいた」と謝った。
そう言うと彼女は、「そうだと思った」とあはは、と笑った。
地平線の上、ほんの少しだけオレンジ色に染まる夕暮れに彼女がゆっくりと瞬きする。
「帰ろうよ、寒いし。」
醤油を受け取り、冷え切った彼女の手を握った。
「本当に今日珍しいね。手なんて普段握らないのに」
「・・・糸が」
「糸?」
「糸が引っ張られる感覚が煩わしいんだよ」

ちゃんと最後にはお前のとこに帰ってくるんだからいいだろう。


2018.10.29 手繰り寄せる

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