はじめは全て小さな事だった
「・・・・・機嫌直せよ、皆本〜〜〜最近ESPも成長してっからさあ、手加減失敗したんだ。」
薫は上半身は裸、着ているのは下着一枚の女性の写真。
普通に考えて小学生が見るものではない。
それを見ながら困ったように笑い弁解する薫。
「間違えすぎでしょ。」
皆本の上に乗っかりながらなまえは呆れたように言った。
「あはは、まさか肋骨にヒビが入って、脱臼して窒息して、失神するとは・・・・・」
「念派の解析中にそんな雑誌を読むな、薫ッ!!」
皆本若干切れながら叫ぶ皆本。
「も〜〜かんにんしてえや、皆本はん!ウチら友達やん?」
「そう思ってくれるのは嬉しいが、一応上司だってことは覚えてるか!?」
皆本の頭を小突きく葵の言葉にさらに機嫌を悪くする皆本。
「(・・・元々はESPの研究のためにバベルへ来たはずなのに、やってる仕事はクソガキのお守り――――何やってんだ僕は。)」
「(・・・・今皆本、絶対ろくなこと考えてない)」
「クソガキとは何よ!失礼ね!検査のたびに、「最近の子は発育いいな」って内心チラッと思ってるクセに!!」
横から透視だ紫穂の言葉に皆本はどがしゃっ!!と顔から机に突っ込み、薫はくわッと顔色を変え勢いよく椅子から立ち上がる。
「マジ!?発育してる!?どこが!?乳!?乳かああッ!?とーとーあたしの乳も、男の本能を刺激するところまで!!」
げへひゃひゃひゃと笑う薫に皆本は必死に泣き叫んだ。
「デタラメだああーーッ!!下卑たオッサンのよーな笑いをやめろーーー!!」
「皆本はん、ヤラしいっ!!そんな目ェでウチらを!?」
頬を朱く染めながら、どこか嬉しそうに言う葵。
「あっ、ちが・・・・・」
「いや、お前は違うだろ。だってないじゃん。 乳 。」
「うるさい。殺すぞ。黙れ。」
葵の胸の前で両手をかざしながら言う薫に、葵は低い声で言い返す。
「まーまー葵、胸はちっさいほうがいいよ?多分。」
「そーゆーなまえは胸おっきーよなー?」
喧嘩を治めようと口を開いたなまえに薫はニヤァ〜と笑いかける。
薫の対象が自分に移ったことを感じたなまえは逃げようとするがその前に薫に捕まる。
「あ、ちょっ・・・・まっ!あぁっ!」
「うっひょー!こりゃけっこーあるんじゃねぇ?」
「や、にゃぁ!!あぅ、ひゃっ!」
後ろから胸を触られ朱くなるなまえにさらに興奮する薫。
「こ、コラッ!薫!!そんなはしたない真似するんじゃない!」
「・・・ちょっとドキドキしたクセに。」
「紫穂っーー!ひとの人格をつき崩すよーな冗談はやめろっ!!」
皆本は紫穂に向かって怒鳴るがスルーされる。
「MRI検査室準備できました。四人ともいらっしゃーい。」
「あ、はーい。」
「フォローなし!?」
「どんまい皆本。」
紫穂は皆本を無視したままタイミングよく入って来た看護婦のほうを向いた。
ショックを受ける皆本やそれを慰めるなまえ達をよそに、看護婦と手を繋ごうとする紫穂。
「!!」
――ばッ!
しかしその手は怯えた看護婦によって振りほどかれた。
「あ・・・ご・・・・ごめんなさい――――」
慌てて看護婦は謝るが、紫穂は無言で振りほどかれた手を見つめていた。
――ギュッ
「!」
しかしその手は皆本にしっかりと握られる。
「お前らも行くぞホラッ!!」
――ギュゥウ
「?」
「紫穂、」
紫穂の腕に絡みついたなまえは心配そうに紫穂の名前を呼んだ。
「大丈夫よ、なまえちゃん。」
そんななまえを安心させるように紫穂は微笑んだ。
――プ、プルルルルルルルーップルルルルーッ
皆本の携帯から着信音が流れる。
「はい、皆本―――――――え!?あのテレポーターが―――――隙をついて警察から逃げた・・・・!?」
―――
――
―
『逃走するテレポーターを捕まえるのはかなり困難だ・・・・!!一度めは不意をついたが今回はそうはいかんぞ!!』
「はい、局長!!」
『奴は超度5―――移動できる距離も回数も限度がある!目撃情報をもとに警察が範囲を絞って包囲中だ!追いつめられて飛び出してきたら追跡を開始しろ!』
「了解!子供たちはすでに臨戦待機中!いつでも行けます!!」
「え〜〜〜〜?何それ!?」
皆本の言葉を裏切ってヘリコプターの一室ではゴミが散乱し、チルドレンは臨戦待機などしていなかった。
「あの作文を書き直さないかって・・・・・何か特に理由でもあんの?」
ポテトチップスを食べながら不満げに言う薫に紫穂は慌て弁解する。
「う、ううん。別にそういうわけじゃないけど・・・・・・」
「あやしいなー。紫穂がそう言うときには何かあんねん。」
「まぁ理由なんてあってもなくてもいいんじゃない?」
「まぁ、ページ5万もくれたら、「お嫁さん」とか「アイドル」とかてきとーなフィクション執筆したるで?」
「どこの大先生よあんた。」
「アホらしい・・・・・!!そんなのありえないじゃん。」
「あたしたち―――――「超度7」なんだぜ?親にもビビられるあたしたちは、こーやってバベルの中でやってくしかないじゃん。他に何があるのさ・・・・・・・!?」
そう言った薫の顔は何かを抑えるように寂しげで、それは紫穂と葵、なまえも同じだった。
『いたぞ!!目標発見!!』
「聞こえたな!?始めるぞ!」
ヘリのスピーカーから連絡が入り、皆本が部屋に入ってくる。
「全メンバー、ESP解禁コード入力!!チルドレン、解禁!!」
「おっしゃあ!!いっちょ行くか・・・・!!」
――ファンファンファンファンファン
『特務エスパーに応援要請!!被疑者はバイクを盗んで逃走中・・・!!』
道路を駆ける犯人のバイクとそれを追い掛ける何台ものパトカー。
「へッ!!」
しかし犯人はテレポートで警察の前から姿を消し逃走。
警察からはどんどん離れていく。
「あばよッ!!」
そんな犯人の後ろにはザ・チルドレンのメンバーが現れる。
「なにっ・・・・・!?」
「バイクに乗りながらテレポートっちゅうのはええアイディアや!!それくらいしてもらわんと鬼ごっこにならへんからな!」
「でも・・・こっちはこーゆーこともできんだぜ!?」
「っストップ!待って薫!!」
薫はサイコキノで犯人が走る道路を破壊する。
なにかを予知したのかなまえは制止を掛けるが、薫はとまらなかった。
「うわ!?ち・・・・くそッ!!」
「あ!コノヤロ!!」
「だからとめたのにーッ!」
「あっちや!!」
「逃がすかーーーっ!!」
なまえが予知したように犯人は破壊された道路の混乱に紛れてテレポートしようとする。
薫が犯人に向けて壊れた道路のカケラを使い攻撃するが、一般市民に被害がでるだけで犯人はとまらない。
『バカ、やめろーーーっ!!』
「!!」
『周囲に被害を出してどうする!!しばらく泳がせて疲れさせろ!焦らせて捕まえやすい場所に追い込むんだ!!じっくり力をためてチャンスを待て!』
「ちぇっ!うるさいなー、もー!!そーゆーの苦手なの知ってるだろ!?現場の判断にまかせろって!!」
「コラーーッ!!やめてーーー!!」
皆本の訴えは空しく、薫は犯人を追跡しながら街を破壊していった。
―――
――
―
「トンネル・・・・・!!」
「よしッチャンス到来!!つっこめーーー!!」
トンネルに逃げ込んだ犯人を見て薫や葵が中に入ろうとするが、なまえと紫穂は制止をかけた。
「待って!!鬼ごっこは終わりだよ。」
「え?」
「なまえちゃんの言う通りよ!彼、引き返してくるわ。」
――プァアアアアア
――ゴトンゴトン
「わあああああーーーーッ!!たッ、たすけてくれーーッ!!」
電車から逃げながら情けない声で必死に助けを求めてくる犯人。
チルドレン達は呆れたようにその様子を眺める。
「・・・どーする?」
「いや、悩まず直ぐ助けてあげようよ。」
「超度5じゃ脱出する力はもう残ってへんやろ。たすけたり!」
「んーじゃこの辺で、サイコキネシス・バリエーション!!」
「わッ!?」
「サイコ――ハエたたきーーーーッ!!」
薫のサイコキネシスにより、犯人は電車から逃れるが体は半分壁に減り込んでいる。
「たすかってよかったね、おじさん!!」
「・・・・これがたすかったと言えるんか?」
「言えないでしょ。」
「た・・・・頼む、見逃してくれ!!同じエスパーじゃねえか!!」
「え。」
「薫、」
犯人が最後の抵抗とばかりに声を上げた。
なまえはそれに反応した薫の服の裾を掴む。
「俺だって好きでこんなことやってんじゃねーんだ!!お前らならわかんだろ!?」
「強力なエスパーは普通の連中にはジャマ者だ!能力が強いほど俺たちの居場所は限られてんだよ!」
「たまたま拾ってくれたのが、俺はヤクザでお前らはバベルだったってだけじゃねえかよ!?」
「わかるだろ!?金なら全部やってもいい!!」
「・・・・・・・」
「金・・・・?」
「嘘つき、」
犯人はなんとか逃げようとチルドレン達を説得し始め、お金の誘惑に葵は反応する。
薫も柴穂も満更でないなか、なまえだけは違った。
なまえの目つきは鋭い。
「お前達だってきっとあいつらとかわらないんだっ!!」
「なまえ・・・・?(あいつらって、だれなんだ?)」
「子供を誘惑するのはやめてくれ。」
「!!」
反対側のトンネルから皆本が犯人に銃を向けたまま、現れた。
「授かった力で不幸になったのは――――君がそれを選んだからだ!!」
「それだけの力を持っていながら、情けないことを言うなッ!!」
「君はなんにでもなれたし、どこにでも行けたんだ!!この子たちの未来を自分と一緒にするんじゃない!!」
「皆本・・・・!!」
「・・・・・・(なんにでもなれるしどこにでも行ける―――――)」
――きゅっ
「!!」
チルドレン達は皆本の言葉を聞きそれぞれが皆本の手や足にしがみつく。
「・・・・そうだね、皆本!あたしたち――――最強のエスパーなんだもん!」
「・・・・・・・」
「・・・・・・おおきに、皆本はん!」
「君たち・・・・?(・・ま、お守りもそんなに、悪くない仕事かも―――――)」
「・・・・・(未来は変わるのかな―――――)」
嬉しそうな顔のチルドレンと皆本をなまえはどこか泣きそうな顔で見つめていた。
―――
――
―
「え。あのコたちが作文を再提出・・・・・・!?」
「さすがだネ、皆本クン!!こんな簡単に子供に夢と希望を与えるとは・・・・・・・・、サンタクロースでも、こーはいかんぞ!どうやったんだネ!?」
局長と柏木、皆本となまえのいる部屋に局長の笑いが響く。
「?い・・・いや・・・・?僕は何も・・・・・?」
「・・・・(あれが無自覚なのか)」
「で、内容は?」
「まあ待て、今―――――」
『私の夢は、世界征服です。』
あまりにも衝撃的な一文になまえを除く全員は驚く。
『地球最強の私たちが、地球を自分のものにするのは当然です。今みたく誰かに命令されるのはどー考えてもおかしいと思います。』
『今、バベルで働いているのはその日のためにいろいろ勉強するためだ。あと、お金もいる。』
『・・・・ということらしいので、つきあっちゃおうかな。』
『やるといったら絶対やる!!目標は10年以内!!おとなになるのが楽しみです。』
「みっ皆本おおおーーーッ!!貴様いったい何をしたーーッ!!」
「ぼっ、ぼかー知りませんってばーーーー!!」
うがー、ぐぎゅぎゅぎゅーっと局長と皆本が引き起こす騒動を横目になまえはこっそりとため息をついた。
「(あながち嘘でもないっていうのが―――恐いよね、)」
『あたしたちは天使じゃない』 fin.