訪れた朧げな過去
最近、なまえはよく夢をみる。
いつも、同じ夢。
それが自分の力による予知なのか、幻なのか、それとももっとなにか――――――特別なものなのかは彼女にはわからなかった。
夢はいつも同じところで終わる。
内容はあまり覚えていないし、はっきり覚えているのは男の子が一人いるということくらい。
しかし、夢を見た後は必ず胸がほんのりとした暖かさとぴりぴりと走る痛みに包まれていて、瞳からは絶え間無く涙が溢れていて。
なまえは確かに誰かを恋しいと感じていた。
「皆本ーーっ!!起きろっ!朝メシ作ってーーーー!!」
「・・・・・起きたほうが身の為だよー。」
薫はベットで寝ている皆本の上に乗っかりながら叫ぶ。
なまえは紫穂や葵と一緒にそれを眺めながら、皆本に起きるように警告する。
予知するまでもなく、拗ねたチルドレンがどう行動するか目に見えているからだ。
「う〜〜〜〜!!てきとーに何か食えよ・・・・・・!!」
「む〜〜〜!!ていっ!!」
「!!」
なまえの予想通り、言うを聞かない皆本に焦れた薫はサイコキネシスで強制的に皆本を布団から出させる。
そして布団から出た皆本を葵はお風呂にテレポートさせた。
勿論、ご丁寧に水の中に頭から。
バシャバシャと苦しそうに皆本は暴れる。
「がぼげぼくばげべべぐばーーッ!!」
「「お前ら僕を殺す気かあ」・・・・・って。」
「朝ブロに入れてやっただけじゃん*」
透視した紫穂によって伝えられた皆本の言葉。
薫はギャハハと楽しそうに笑うだけだった。
「・・・・・僕は君たちの上官だぞっ!?」
ヂリヂリとフライパンで目玉焼きを作りながら皆本は声をあげる。
「君たちの家には毎日ヘリや車が迎えに行ってるだろ!?僕んちを合宿所にするのはやめろよなっ!!」
「今日は医学検査の日なんだもの。少しでもゆっくり身じたくしたいから・・・・・・」
「ウチなんか家、京都やで?いちいち通ってられへんわ。たまに泊まるくらいええやん!」
「文句言わねーで協力しろよ!!あたしたちをベストコンディションにたもつのも、お前の仕事だろ!?」
青筋を立てながらそう言った皆本に対して、化粧水で頬をぴたぴたと叩きながら紫穂は、櫛で髪の毛をとかしながら葵は、薫はバスタオルを巻いただけ姿の姿で歯磨きをしながら言った。
なまえはそんな三人を眺めながらため息をついた。
「(クソガキども・・・・・!!)へーへー!!他にご用は!?」
なまえと同じようにため息をつく皆本に薫はギラギラと輝くスケスケのパンツを見せて子供らしくないことを言う。
「今日は勝負パンツできめよーと思うんだけど。これどう!?率直な意見を言え!」
「ガキは勝負なんかせんでいいっ!!」
皆本は力いっぱい叫んだ。
――バタバタバタ
皆本のマンションの直ぐ傍にバベルのヘリが現れる。
そしてヘリのドアが開き、そこから局長が顔をだしながら叫ぶ。
「皆本おおーーーーッ!!起きとるかーーーー!?緊急出動要請だ!!今日のスケジュールは全てキャンセル!「チルドレン」はただちに―――ン・・・・・!?」
ヘリのドアから身を乗り出した桐壺は、ベランダから見えた光景に、途中で言葉を止めた。
「ガキってゆーなあっ!!それが一番ムカツクって言ってんだろ!?」
「しまっ・・・・まだESPリミッターが・・・・・ぐはああああッ!!」
なまえはヘリからこっちを驚きながら見ている局長をチラリと見る。
そしてバスタオル姿の薫によって壁に張り付けられている皆本を見ながら、あらかじめ確保したおいた自分の朝食を食べ始めた。
『バベル・1現着!!』
ヘリからは海岸沿いにある道路が崖崩れで塞がっているのが見える。
『ただちに着陸、特務エスパーによる救助活動を開始せよ!!』
「これは・・・・!!ひどいことに――――!!」
ヘリから降りた皆本は、現場の状況に眉をひそめた。
道路のトンネルは崖崩れにより塞がり、土砂だけでなく巨大な岩石によって救出作業は困難を極めている。
「目撃者の話では、まだ――――5、6台の車が生き埋めになっているもようです。」
「重機を使っても救出作業には数日を要する!生存者を救うには、超能力に頼る他ない!!頼むヨ「チルドレン」の諸君!!」
力強くそう力説する局長がチルドレンのほうを見ると、彼女達からはいかにもだるいですという雰囲気がでていた。
薫は怪しいドリンクを飲み、紫穂はポリポリとお菓子を食べ、葵はにちゃにちゃと納豆をかき混ぜている。
なまえにいたってはガードレールに寄りかかって寝ている。
「え〜〜〜っ!?あの中にはいんのお〜〜〜〜?」
「せっかく朝シャンしたのに・・・・」
「こんな朝メシで力、出るかいな〜〜〜〜〜」
「すぅーすぅー」
「なんだ、その態度は!?人命がかかってるんだぞ!!」
怒鳴る皆本に眠っているなまえを除くチルドレン達は拗ねたように言った。
「どーせあたしたち ガキ だもん!」
「私たちが事故を起こしたわけじゃないしー。」
「なーっ。」
「あ〜〜〜やる気でね〜〜」
「うぅ〜もう行くの?」
「ま、人助けやからしゃーない。」
「(こ・・・・こいつら・・・・・!!)」
仕方がなさそうにトンネルに向かって行くチルドレンと未だ眠そうに目を掻いているなまえに皆本は怒りを隠せない。
「皆本おーーーーッ!!どーゆうことだ、これはッ!?」
「うっ・・・・!!」
「この非常時に、彼女らのモチベーション下がりまくっとるじゃないか!?」
チルドレンの様子を見た、局長が鼻水と涙を流しながら皆本の胸倉を掴み攻め立てる。
「エスパーのパワーが精神状態に大きく左右されるのは知っとるだろう!!かける言葉には十分注意したまえッ!!あのコたちは我が国にたった四人の「超度7」!!いわば国の宝なんだからネッ!?貴様の不用意なひと言で、あのコたちは小さな胸を痛めてしまったのだヨ!!」
「局長がそーやって甘やかすからーーーーーーーッ!!」
「みなもとぉー」
「なにんだいなまえ…ってうわぁ!?」
ズガッと大きな音と共に薫によって消防車が皆本と局長目掛けて落とされる。
「胸が小さいとかゆーなああッ!!」
「あぶないよぉー」
「言うのが遅い!!予知してたなら先に言ってくれっ!!」
皆本の訴えは現場に虚しく消えた。
「ほい、7人め!!」
「この人は軽傷よ。次を連れてくるまで、救急車は待ってて!」
「それと応急処置で僕が治療したけど、それは一応だからちゃんと診察してね!」
「りょ・・・・・了解!!」
葵のテレポートでトンネルを往復し、中に居る人の救助は薫が、怪我の判断を紫穂が、そして怪我の治療をなまえがやり、次々と作業を行う。
「次で最後やな、紫穂!?」
「うん!」
「・・・・・・」
テレポートで消えたなまえ達の後を見つめるレスキューの人は、畏怖にも似た感情を抱いていた。
「本当にあっというまですね・・・・!!これじゃ我々レスキューはなんのためにいるんだか・・・・・・」
「いや・・・あーいう連中ですからここ一番でしか使えないんです。」
皆本は困ったように言う。
「あいつらはあの強力な力のせいで、小さい頃からワガママ放題に育ってきたんです。こういう人命のかかった仕事はなるべくやらせないほうが・・・・・・」
「・・・・・皆本!それは違うヨ!ああいうコたちだからこういう仕事が必要なのだ!「超度7」のパワーをフルに発揮していい場所など、他にはないのだからネ・・・・・・!!」
「・・・・・・!!」
「日常生活であんなパワーが必要かネ?超能力など、普通の生活の中では迷惑な脅威でしかないのだヨ。あとに続くエスパーたちのためにも、あのコたち自身のためにも・・・・・・彼女らは常に実践し、証明し続けねばならんのだ。」
『あのコたちの才能はすばらしい!そしてそれは―――誰かを守り、幸福にすることができるからなのだと・・・・・・!!』
「あそこよ、薫ちゃん、なまえちゃん!」
「おしっ!!これで全員救出っ!!」
「だねっ!」
バキッと紫穂が見つけた車のドアを薫がサイコキネシスで外し、なまえが中にいた女性を救出する。
「葵!!あとは頼む!!」
「よっしゃ!!」
薫の掛け声に、瞬間移動能力を発動しようと葵が構える。
車の中から救出した女性を、見つめていたなまえが何かに気づいたように目を開くと葵へと声を発した。
「っあ、ちょっ駄目!葵!」
「テレポート!!・・・・・・って、えっ・・・・!?」
「!?」
「あ・・・・葵ちゃん!?」
「あーぁ、やっちゃった。」
紫穂と薫は驚き、静止が間に合わなかったなまえはがっくりと肩を落とした。
「え!?問題発生―――――!?ど・・・・・どうしたっ!?まさかケガでも――――」
『いや、そーゆーわけじゃ・・・・・・』
「なんか・・・・葵のテレポートがさぁ・・・・・調子悪くなってぇ〜〜〜〜」
「出してっ、薫っ!!なまえっ!!早う出してってば!!」
薫は皆本と通信しながら困った顔し、岩に体が半分埋まっている葵を見る。
葵はなんとか岩から抜けようと頑張りながら声をあげた。
『あたしたち外に出られなくなった?・・・・・・・みたいな。』
「なにいいーーーーッ!?」
皆本と局長は叫んだ。