He has red eyes


「やぁ、起きたかい?」




誰か、状況がわかるように説明してください。何故目が覚めたらこんなことになっているの…!?

視界を占領している男の子。まるで神から祝福された天使のような美しい顔が、部屋の明かりを受けて鈍く光る黒の双眼が私を見ている。

あ、あの、なんでこの子、私の上に跨っているの────!?



「あの「この孤児院の前で倒れていたから中に運んだんだ。随分と疲れていたようだけど何かあったの・・・?」

「えっと「そういえば、君のトランクは不思議だね?君も魔女なの?」

「は・・・?「そうそう!名前は何て言うんだい?」

「・・・・・・・・・」




ひ、人の話を聞いてーーーー!!
さっきからキラキラと笑顔で、質問をマシンガンの如く次から次へと投げかけてくるので口を挟む隙間がない。

笑顔なのになんだか圧力を感じるし、心なしかだんだん距離も近づいているように見えるし、し、深呼吸して。いいい言わなきゃ!

ドクドクと気持ちに合わせて主張を始めた胸を抑えるために息を吸う。




「あ、あの!」

「なんだい?」

「貴方はなんで・・・・私の上に跨がっているんですか!?」




なんとか絞り出した割には大きめな声に、至近距離で美形は目をしばたかせた。

呼吸に合わせて、目の前の美形の前髪が私の額をかすめる。
い、息がかかってしまいそう。ううん、もう
呼吸を意識し始めたら、力強く跳ねていた心臓の動きがさらに早くなり、急に苦しくなる。

心なしかさっきまであった圧力が消えて・・・目を瞬かせる顔も可愛い───ってじゃなくて。




「君の寝顔が可愛いかったから?」




小首を傾げてあっさり言う台詞じゃないと思う・・・。

そしてこのままだと、本当に心臓が痛くて死んじゃいそう────!




「・・・・と、とりあえ退いて下さい。」

「えー。」




えーじゃなくて!本当に!お願いします!

図太く、退く気配がないのでぐいぐいと美形の胸を腕で押してやっと動いてくれた。

私の上から退いてくれたけど、なぜかベットの上からは退いてくれないようで。
自分でも顔に熱が集まっているのがわかるし、呼吸も苦しくて、ああもうこれ以上戦う気力がありません…。

もうこのままでいいから、とりあえず名前でも聞こう…。




「・・・えっと、お名前を聞いても?」

「リドル。トム・リドル。」

「えっと、・・・リドル。此処は?」




名前を呼ばれ、嬉しそうに微笑むリドル。

また心臓が不自然に跳ねて、こ、呼吸が困難に。

か、顔が綺麗だからだもんね…!別にときめいたとかそんなんじゃないよね!?





「その前に、君の名前は?」

「あ、うんと、多分・・・・ナマエ、です。」

「多分?」

「えっと・・・・・・、」




言った方がいいのかな。でも、会って少ししか経っていない相手なのに、「私、記憶損失みたいなんです!」 とか言っても・・・。

倒れていた(らしい)ところを助けてもらっただけでも迷惑をかけて申し訳ないのに、記憶損失だなんて言ったら、面倒な奴だと思われそうだし・・・。

というか、私、帰る場所・・・ないんだ。




「・・・・・此処は孤児院だよ、ナマエ。」

「───孤児院?」




どうやらさっきの質問の答えらしい。




「そうだよ。僕が外に出ようとした時、君はドアの前に倒れていたんだ。」

「・・・すみません。逃げるのに必死で・・・・、覚えていない・・・です、」

「逃げる?誰かに追われていたのかい?」

「あー、えっと・・・・・・路地裏で、絡まれ、まして、」




私がしどろもどろにそう伝えると、リドルは「ふーん」とだけ呟いて私の髪に手を伸ばした。




「・・・帰る場所はあるのかい?」




リドルによって弄ばれる髪。
彼の表情からは何を考えているかは読みとれない。

帰る、場所・・・・はおそらくないだろう。
というか、記憶がないのでなんとも言えない。




「多分、・・・ないです。」

「なら、此処にいればいいよ。」

「え、」

「大丈夫、皆には僕から言っておくよ。」




ニッコリ微笑むリドル。

もしかして私を安心させる為に笑ったのかもしれないが、それは逆効果だ。何故だか、その笑顔は私を悲しくさせた。
私は彼の笑顔から優しさや慈愛といった・・・・・温かい感情を見てとることができなかった。

生じる違和感。

そうだ、要するにからっぽだ、彼の笑顔は。




「あ、りがとう、リドル。」




「礼には及ばないよ」と、笑う彼はやっぱりからっぽだった。




「ねぇ、ナマエ。」



リドルの黒い瞳に、チロリと紅い色が怪しく光る。

その色から、目を背けなくて。



「な に?」

「君はさっきから、何をそんなに怖がっているんだい?」




リドルの黒い瞳の奥に見える紅に、捕われる。

リドルは笑っていた。
でも、さっきまでの笑みとはまるで違う。

目が、紅く光って、まるで私を見透かそうとするように私を覗き込んでくる。

逃れられない、
そこから目が放せない。




「ねぇ ナマエ、」




ギシリ、リドルが乗ったベットが苦しげに鳴く。

彼はごく自然な動作で私の頬に手をあて、ゆっくりと耳元まで唇を近付ける。
リドルの吐息が肌にかかってこそばゆい。

私は息をするのに必死で────、って呼吸ってどうやってするんだっけ!?



「!リド「ナマエ、君は僕のものだ。」

「な、にを・・・・・・、」




言ってるの、とは言えなかった。

眼前に広がる真紅。唇を掠めた熱。




「ご馳走様。」




満足げな彼の笑顔。

一体何が起こったのか、全く私は理解できなかった。










I













―――――――――




変態にファーストキス(多分)を奪われました。



title:彼の目は紅 2018.12.25

/

[1/2]

章一覧/私と変態のそんな日常一覧/サイトトップ