とある夫婦の1日 仕事帰り
「ステラ!」
遠くから彼に名前を呼ばれ、座っていたベンチから立ち上がる。グルスは急いできてくれたのか珍しく髪と上着が少しだけ乱れていた。
「待ちましたか?」
『ううん。私もさっき、来たところ』
彼の大きな手が私の頬を撫でる。
「さっき来た、というのは嘘ですよね?頬がこんなに冷たい」
『グルスの手はあったかーい!』
「私の話、聞いてます?」
『聞いてる聞いてる』
彼は呆れたような表情で私の頬を今度は両手で包んだかと思えば、ぐにぐにと私の頬を弄り始めた。
『痛い!痛いよ!グルス!』
「痛くしているのだから当たり前でしょう」
『はーなーしーてー!』
「嫌です」
しばらくそんなやりとりを続けていると
『あ、』
「雪が降ってきましたね」
空からふわふわと白い雪が降り始めた。
通りで今日は寒いわけだ。
「雪が積もる前に帰りましょう」
『はい!』
差し出された手に自分の手を重ねる。
彼の手から伝わってくる体温は私より少し高い気がする。ぎゅっと彼の手を握れば同じように握り返してくれる。
ーあぁ、幸せだなぁ
どんなに小さくて些細なことであってもそれを幸せだと思えるのは、きっと隣に彼が居てくれるからに違いない。
とある夫婦の仕事帰り
『今晩のメニューのリクエストはありますか?』
「そうですね…寒いので温かいものがいいです」
『ふふ、温かいものって…随分アバウトですね』
「仕方ないでしょう?貴女が作ってくれるものはどれも美味しいので悩んでしまうんですよ」
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