昔話5
談話室に戻るとメルとレギュラスの2人がいた。どうやら談話室には彼らしかいないようだ。2人の元に近づいていくにつれてあることに気がついた。レギュラスはいつも通りの制服姿であるが、メルは何故かドレス姿だ。
離れたところからしばらく観察していると突然、メルは重みのありそうなドレスを引きずりながら女子寮へと駆け上がっていった。
「(いったいどうしたんだ?)」
女子はどこにあの重いドレスを引きずりながら動く力を隠しているのかといつも不思議に思う。彼女が見えなくなったあとも階段のあたりを見ていると、ため息をつきながらこちらに振り返ったレギュラスと目が合った。
「セブルス先輩、お疲れ様です」
「あぁ。ところでさっきのは?」
「メルの今度のダンスパーティーのドレス選びです」
もうそんな季節なのかと、談話室に備えつけられたカレンダーを見る。ダンスパーティーの存在なんて完全に忘れていた。まぁ、参加したところで何のメリットもない。むしろデメリットばかりだ。それは、あの忌々しいポッター達のせいだと言い切ってもいいだろう。
しばらくレギュラスと話していると、女子寮から紺色の綺麗なドレスに身を包んだメルが降りてきた。先程の可愛らしい感じとは違い、今度は大人っぽい印象だ。
『レギュラス、これはどうかな?あ、セブルス先輩お疲れ様です』
「あぁ」
レギュラスの時と同じように返事をする。笑顔でいつものように話しかけてくるメルのまわりをゆっくりと観察しながら歩き回るレギュラス。
「(なんだこの奇妙な光景は..)」
そう思わずにはいられなかった。レギュラスは3周目に突入するかしないかのあたりで足を止めた。
「セブルス先輩は、メルのこのドレス姿についてどう思いますか?」
そして突然この質問をぶつけてきた。レギュラスはどう思うのかと問えば、先輩の意見を聞かせてほしいと言われてしまった。どう、と言われても困る。そもそも僕に聞くのが間違いだ。こういうことに疎い自分の頭の中で必死に意見をまとめてみる。
「ドレスは先程のものより、断然こっちのほうがいいと思う。ただ、そのネックレスは違うものに変えたほうがいいのではないか?」
普段と同じ調子で言いきったが、自信などまったくと言っていいほどなかった。きっと今の自分は目が泳いでいるに違いない。だが、思ったことはちゃんと言ったつもりだ。泳いでいた視線を恐る恐るレギュラスに戻す。レギュラスの隣で能天気に僕の言葉に照れているメルが羨ましい。
「やっぱり、」
レギュラスが俯いていた顔をゆっくり上げる。何がやっぱりなんだ?
「やっぱり、先輩もそう思いますよね!僕もこっちのドレスのほうがいいと思っていたんです。」
「そ、そうか」
「セブルス先輩はやっぱり頼りになります。メル、部屋にあるネックレスも全てここに持ってきてください。一緒に選んでもらいましょう」
『了解!すぐに取ってくるね』
軽やかなステップで階段を駆け上がるメルを茫然と立ち尽くしながら見送る。あまりの展開のはやさに頭がついていかない。どうして僕が後輩のドレスコーディネートをしなくてはならないんだ。レギュラスの方をみれば、彼はソファーの上に積み上げられたドレスの山を片付けていた。僕はこれから始まるであろうネックレスの試着会のことを考えるとため息をつかずにはいられなかった。
星の銀貨あつめて
『このネックレスなんてどうですか?』
「モチーフである小さい星のさりげない存在感がいいと思うが...レギュラスはどう思う?」
「文句なしです。あとは、メルが僕のパートナーとして相応しい立居振舞をしてくれれば完璧ですね」
「...メル、去年のダンスパーティーで何かしたのか?」
『いや。特にやらかした覚えはないんですけど』
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