昔話4
「うおぉぉっ!?」

いつものメンバーでのろのろと廊下を歩いていると突然、腰のあたりに衝撃を感じた。何事かと下を見れば

『シリウス先輩、わたしどうしたら、』

今にも泣き出しそうな声で俺の名前を呼ぶ、弟の恋人が目を潤ませながら俺のローブにしがみついていた。それを見て、俺はまたろくでもないことにことに巻き込まれるのかと、静かにため息をついた。

とりあえず近くにあったベンチに座らせて話を聞くことにした。プロングズたちは珍しく気を利かせて席を外しているので、ここにいるのは俺とメルだけ。

「レギュラスが見合い!?」
『はい。偶然聞いてしまって、それで』

俺のところに逃げてきたってわけか。彼女の話によれば、レギュラスは見合いの話を楽しげに友達にしていたらしい。昔からその類のものを嫌っていたのに珍しい。それにメル一筋のあいつがそんなことをするとは思えない。
ふとメルのほうを見ればその場面がフラッシュバックしてしまったのか、また泣きそうになっていたのでガシガシと頭をなでてやる。そうすれば、少し照れ臭そうに笑いながらありがとうございますと素直にお礼の言葉を言うメル。彼女がどうしてスリザリンになったのか本当に謎だ。

しばらく頭を撫でていると、後ろから人の気配を感じた。やっと来たかと思いながら立ち上がり、振り返る

「兄さん、メルに何してるんですか。その手を離してください」

不機嫌そうな顔をしたレギュラスがそこに立っていた。とりあえずメルの頭から手を離す。これ以上、こいつを不機嫌にさせたら面倒くさいことになるのは目に見えている。

「メル、探してもいないので心配しましたよ。さぁ、寮に戻りましょう。」

先程の俺に対する態度はなんだったのかと疑うほど、優しい口調で話しながらメルの手を取ろうとしたレギュラス。しかし、メルはレギュラスの手が届く前に俺の後ろに隠れてしまった。おいおい、どうした。

『ごめん、レギュラス。先に戻ってて』

メルの行動は、俺もレギュラスも予想外でぽかんとしてしまった。殺気を感じてレギュラスのほうを見れば、本気で殺されるのではないかと思ってしまうほどこちらを睨んでいた。

「兄さん。メルになにしたんですか」
「俺は何もしてねぇよ!」
「嘘です。普段のメルならこんなことしませんよ」
「だから、俺は何もしてないっての!そもそもお前が見合いの話を珍しく受けたのが悪いんだろ!」
『し、シリウス先輩!』

ついついぽろっと言ってしまった。これじゃあ、俺かメルのどちらかが話を盗み聞きしたというのを白状したようなもんだ。俺とメルの顔が一気に真っ青になる。メルは大丈夫だとしても、俺は生きていける自信がない。確実に、レギュラスに殺される。ビクビクしていると、レギュラスが口を開いた。

「メルも知っていたんですか」

少し照れ臭そうに俺の後ろに隠れているメルに話しかけるレギュラス。なんでこいつ照れてるんだ。俺のローブを掴みながらメルが小さくこくんと頷き、泣き出しそうな声で話し出す。

『わたし、レギュラスと別れたくない』
「...兄さん。本当にメルに何したんですか」

俺は何もしていないと必死に訴える。レギュラスがはぁ、とため息をついてもう一度メルと向き合う。

「メル。どうして僕とメルが別れる話になってるんですか」
『だって、レギュラスはお見合いするんでしょう?』
「そうですよ」
『だったら、やっぱり別れるしか...』

そう言って彼女は俯く。それに対してレギュラスは、あぁ、そういうことかとひとりで納得した顔をする。

「メル。貴女、勘違いしてますよ」
『へ?』
「僕の今度のお見合いの相手、知っていますか」

わからないと首を横にふるメル。俺はなんとなくわかった気がする。そうじゃないとレギュラスがさっき照れ臭そうにしていた理由が他に見当たらない。

「メル、貴女ですよ。今度の僕のお見合いの相手」

にこにこと嬉しそうにしているレギュラスを見て、あいつのあんな顔ひさびさに見たな、なんてぼんやりと思った。メルはメルで、最初は頭が追いつけていないのかぽけーっとしていたけど、理解するとすぐに涙目になってレギュラスに抱きついた。
ふたりとも幸せそうな顔しやがって...人騒がせなカップルだな。まぁ、無事に問題解決ってところだなとひとりで安堵する。
目の前でいちゃつき始める弟とその彼女。独り身の俺はなんだか悲しくなってきたので、ふたりの邪魔をしないようにそっとその場から離れた。


年Sの受難


「おかえり、パッドフット!無事に問題は解決したのかい?」
「まぁな」
「だけど、その様子だとふたりのラブラブオーラにやられて、悲しくなってこっそり帰ってきたってところかな」
「....。(なんでムーニーはそこまでわかるんだよ)」
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