的場さん家の居候 3
廊下に人の気配を感じると同時に、わたしが泊まっている部屋の襖がすっと開いた。
「ことり、少し出掛けてきます」
『はーい』
「私が帰ってくるまで大人しくしていてください」
『はーい。宿題して待ってるので心配無用です』
せっかく旅館に泊まりに来たというのに、宿題に追われているわたしは机の上から視線を逸らさずに的場さんと会話をする。
あぁ、もう!久しぶりの遠出なのに。
こんなに宿題出すなんてあの先生は鬼か!
はやくこの大自然を堪能したいのに、なんてことを考えながらいつものように的場さんとの会話を適当に流した後。せめてお見送りくらいはしようと思い、わたしはそこで今日初めて視線を的場さんへと向けた。
『げっ!?』
「ことり、どうかしましたか?」
『あの、的場さん。まさかその格好で出掛けるんですか』
今日の的場さんは何故かいつもの着物姿ではなく、黒っぽいパーカーにズボンという(的場さんにしては)珍しい格好をしていた。
(なななな、なんと厨ニ病全開な格好を)
冗談であってほしいと思っていたが的場さんはどうやら本気らしく、「そうですよ」という返事が返ってきてわたしは眩暈がした。
ある日の午前
『的場さん、まさか番傘持ってくんですか』
「えぇ。これがないと落ち着かないもので」
『そ、そうなんですか...気をつけて行ってきてくださいね。
(通報されても仕方ないくらい怪しくなっとる)』
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