卯月の嘘 3
「古橋、」
「どうした花宮」
「俺のチョコ知らねぇか」
花宮からの予想外の言葉に俺は固まり、着替えていたザキは、はぁ?という気の抜けた声を出した。
「いや、俺は知らないぞ。急にどうした」
「予備のチョコがねぇんだよ」
そう言って、部室のロッカーの中を探す花宮。
花宮が忘れるなんてことはまずない。たしか花宮がいつも食べているのはカカオ100%のチョコのはず。とてもじゃないが、普通の人間が好き好んで食べるようなものではないと思う。そんなものを盗むような奴は、余程の物好きか馬鹿に違いない。しかも、花宮のチョコを盗んだとなれば尚更だ。
「チッ、仕方ねぇ。諦めるか」
チョコを探すのを諦めた花宮がしぶしぶ着替え始める。するとそこで、だいぶ前に野々宮と一緒に体育館に向かったはずの原が戻ってきた。どうやらボトルを忘れたらしい。原が体育館に戻ろうとすると、花宮が声をかけた。
「あいつ、ちゃんと始めてたか」
「あー、うん。ステージの上で蹲りながら必死でやってるっぽい」
「あの馬鹿が必死に勉強してるなんて不気味だな」
変なもんでも食ったのか、と変なところで野々宮の心配をする花宮。珍しいこともあるものだな。あの花宮が他人の心配をするなんて。しばらく原と花宮のやりとりをぼーっと見ていると、原が「じゃ、先行ってると部室の扉を少し開けた。それと同時にどこからか聞き覚えのある叫び声が聞こえてきた。
『うわぁぁぁ!めっちゃ不味い!苦い!
こんなの大好きとか真ちゃんの味覚がとっても心配なんだけど』
この叫び声を聞いた花宮はしばらく固まったあと
青筋を立て、恐ろしい形相で部室から出て行く。
部室に残った俺たちは花宮の後ろ姿を見送りながら
とりあえず野々宮の無事を祈っておいた。
泥棒つかまえました
「犯人はテメェか、玲!」
『はっ!どうしてばれてんの!?まさか、原ちゃんが密告したんじゃ...』
「あんなでけぇ声で叫んでおいて分からねぇわけがねぇだろ、バァカ!」
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